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自家培養表皮による「表皮水疱症:EB」の治療
自家培養表皮による「表皮水疱症:EB」の治療

表皮水疱症とは、日常生活の少しの刺激や摩擦で皮膚や粘膜のびらん(ただれ)や水疱(水ぶくれ)を生じる遺伝性の皮膚病です。
人間の皮膚は大きく3層に分かれ、表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」で構成されます。
表皮と真皮の間には接着の役割を持つ基底膜があります。表皮水疱症はその基底膜を構成するタンパク遺伝子の変異によるものとされています。
そして、遺伝形式と水疱が発症する皮膚の層の位置によって大きく3つの病型に分けられます。
1 表皮内に水疱ができる「単純型」
2 表皮と基底膜の間にできる「接合部型」
3 真皮にできる「栄養障害型」
表皮水疱症には、水疱、びらんの他に瘢痕、栄養不足や貧血など様ざまな症状があり、
それぞれに対して治療がおこなわれますが、これらの治療は対症療法であり、この疾患を治すものではありません。
自家培養表皮は、「2 接合部型」、「3栄養障害型」の治療に用いることができます。
- 自家培養表皮の移植例
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患者さん:10歳 男児
診断:皮膚生検及び遺伝子検査により劣性栄養障害型表皮水疱症。両下肢全体に潰瘍化と再上皮化を繰り返すびらん・潰瘍あり
治療病院:蒲郡市民病院 皮膚科


- 皮膚採取
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・手術室で鎮静麻酔を使い、眠った状態で採取。
・下腹部からびらん(ただれ)のない正常と思われる2㎠の皮膚を採取。
- 自家培養表皮の移植
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・手術室で鎮静麻酔を使い、眠った状態で「自家培養表皮」を移植。
・びらんを生理食塩水で洗浄、「自家培養表皮」を移植し、創傷被覆材を貼付して包帯で固定。


- 自家培養表皮の移植後の経過


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術後1週で自家培養表皮は完全に生着。
部分的に物理的刺激を受けやすい箇所(膝や手が届きやすい大腿部)にびらんの再燃が認められたが、
自家培養表皮を移植することにより、素早くびらんを上皮化させることができた。経過は良好で、
自家培養表皮によって素早く創を上皮化させることができるので患者様とご家族の治療満足度はとても高い。
患者さんのご家族にお聞きしました。
- 「自家培養表皮」による治療を受けようと思ったきっかけを、教えてください
- 通院している皮膚科の先生に蒲郡市民病院で皮膚移植のお話が聞けると教えてもらい決めました。
- 移植を受けた前後で日々のケアや体調に変化はありましたか
- 直後はびっくりするくらい綺麗です。いつも皮膚がつっぱったりして脚(膝)が曲がっていたのがまっすぐになりました。血液検査も軒並みよくなっています。
- 移植した後の日常生活や学校生活について教えてください
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手で掻かないように、汗を沢山かかないようにしていますが難しいです。
1教室40人くらいいますので、移植後2週間くらいは家で過ごしています。
本人にはぶつかったりしないように気を付けるよう言うくらいで他は変わりません。
- 退院後、ご自宅でのケアで苦労されたり、工夫された点をお教えください
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退院後は、2週間くらいはメピテル®ワンとメピレックス®を使用しています。
とにかく、掻いて皮膚を剥いてしまうので寝ている時や手を使わない時につけるギプスを作り固定しています。
- 移植前と同じ通常のケアに戻したのはいつ頃でしょうか
- 3週間後(手術後4週)から通常のメピレックス®のみです。
- 今回の治療にあたって普段の治療からの追加の費用負担はありましたか
- ありませんでした。
- この治療を受けてよかったと感じていらっしゃいますか。その理由もお教えください
- 脚の曲がりがなくなりましたし、血液検査の結果が本当に良くなりました。深い潰瘍(びらん)もできなくなりましたので治療を受けてよかったと思います。
- 最後にこの治療法を受けようと考えていらっしゃる患者様とご家族へメッセージをお願いします
- 個人差があると思いますが、我が子にはよい治療法だと思いました。
CRP も下がり、熱も出ることが少なくなりました。これまでは皮膚再生に栄養をたくさん使っていましたが、
「自家培養表皮」移植後から身長が伸び始めました。我が子には良いことばかりで悪いことはひとつもありませんでした。

治療を行った蒲郡市民病院の先生・看護師さんのインタビューは次ページです
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