担当の先生・看護師さんにお聞きしました
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担当の先生・看護師さんにお聞きしました

蒲郡市民病院 皮膚科 部長
久保 良二 先生 < Kubo Ryouji >
日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
専門領域:乾癬・白斑・褥瘡
名古屋市立大学医学部 臨床准教授
蒲郡市民病院特定認定再生医療等委員会 委員
蒲郡市民病院 看護部/皮膚・排泄ケア特定認定看護師
藤田 順子 看護師 < Fujita Junko >
- 蒲郡市民病院で治療を行うことになったきっかけを教えてください
-
久保:
きっかけは蒲郡市のクリニックの先生より、「自家培養表皮」を使って治療してあげたい
EB(表皮水疱症:Epidermolysis Bullosa/EB)患者様がいると相談を受けたことでした。
私は以前にも大学病院でEB 患者様を診ていた経験があり、当時は被覆材や軟膏を処方していましたが、
今回は新たに「自家培養表皮」を用いた治療を当院で行うことになりました。
-
表皮水疱症患者様をはじめて受け入れるにあたり、準備されたことはありますか?
-
久保:
「自家培養表皮」を用いた治療法は手術手技自体は難しくありませんが、
EBという病態も含めて術後管理が大変です。
その為、当院のスタッフが一丸となって治療する必要があると考えましたが、
当院ではEBの患者様を受け入れたことがありませんでした。
そこで関連するすべてのスタッフ(外来看護師、病棟看護師、管理栄養士、ICU、小児科、麻酔科、整形外科等)の
EB に関する理解を深め、治療への協力をお願いしました。
-
藤田:
患者様と初めてお会いしたとき、大変怖がられている印象がありました。
その為病院への恐怖心や抵抗感をなくすことを心掛けました。
また、EB患者様の皮膚は非常に脆弱なため通常の固定に使用するテープが使えません。
当院では低刺激性のシリコンテープを用意し、皮膚が健常なところでルートをとってもらい、
シリコンテープでしっかり固定しました。患者様が喜んでくれるように、
テープにはキャラクターのイラストが描いてあるものを選びました。
点滴を外すときは元々当院にあったスプレータイプの剥離剤を使用しようと思いましたが、
患者様が怖がられましたので、滴下タイプの剥離剤を新たに準備し使用しました。
そして、病棟では患者様と関わるスタッフを固定し、できるだけ仲の良いスタッフが対応するように配慮しました。
その甲斐もあって最近では、当院へ来る抵抗感も少なくなり、患者様から元気よく挨拶してくださるようになりました。
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蒲郡市民病院での「自家培養表皮」移植について教えてください
-
久保:
患者様ご自身の皮膚を採取する手術と培養した「自家培養表皮」を移植する手術を行います。
小児のため手術の際は手術室での鎮静麻酔が必要でした。大人の方でしたら外来で行える治療だと思います。
移植の手術はびらん・潰瘍をきれいにしてから、「自家培養表皮」を移植し、ガーゼで固定します。
始めは一度に全身に移植することは術後管理の観点から難しいと考え、1回目は「自家培養表皮」を腹部に2枚だけ移植し、
その結果と術後管理を検討しました。1回目の経験を元に、2回目は右脚に10枚、3回目は左脚に10枚、4回目は背中と腹部、
両脚に合計14枚の「自家培養表皮」を移植しました。術後の包帯固定を考慮し、移植する場所を決めています。
体幹と手足については移植後の管理がしやすく、治療成績も良好です。
- 術後管理の方法や工夫を教えてください
-
久保:
「自家培養表皮」移植後はメピテル®ワン、メピレックス®Agの順に貼付し包帯で固定、
移植後4日目にメピレックス®Agを交換し移植後7日目に開創しました。
その際、移植した表皮が生着しており浸出液も少なくなっていました。
術後1~2週後にはメピテル®ワンからメピレックスライト®に変更しました。
1回目に移植した腹部は掻いてしまい管理に難渋したため、脚に移植した際はギプスを巻いて掻かないようにしました。
特に夜間は無意識に掻いてしまうため注意が必要です。現在は夜間はギプス、昼間はサポーターで過ごしています。
-
藤田:
私はより術後のケアをしやすくするために、手術に立ち会って創の状態を把握しています。
移植後7日目の開創時には鎮静をかけて処置を行いました。
-
退院後の自宅での管理について、患者様やご家族への指導内容など教えてください
- 藤田:
患者様に適したケアは毎日ケアされているご家族がよくご存じです。
そのため、ご自宅での管理について特別な指導はしていませんが、疑問や不安に思ったことはなんでも相談してくださいとお伝えしています。
退院後の栄養管理は、栄養士と連携してお母様に食事の写真を送っていただきアドバイスをしています。
痒み対策として、普段は弱酸性シャンプーを使っていますが抗真菌剤の石鹸を使うのも一つの方法かもしれません。
- 治療成果と今後の治療計画について教えてください
- 久保:
長年に渡り繰り返していたびらんを「自家培養表皮」移植により閉鎖することができました。
また、全身状態の改善も認められCRP が移植前6-7から移植後0.5に落ち着き、プレアルブミンも1桁から2桁に改善しました。
栄養状態・貧血も大いに改善しています。
今後の治療計画は、広範囲のびらんは治癒したため外来で入院せずに移植することも検討しています。
- 今後の表皮水疱症の治療に期待することを教えてください
-
久保:
今回、「自家培養表皮」を移植してEB の広範囲に及ぶびらんを閉鎖できたことに驚きました。
この治療が広まり少しでも創を小さくできれば、EB患者様の苦痛を和らげられると思います。
課題は創を保護する材料です。可能であればJ-TECさんに処置が簡便になる創傷被覆材や吸収されるステープラー(ガーゼ固定用)など、
現場の意見を取り入れたものを開発していただくと更に治療効果を高められると思います。
また、表皮水疱症の患者様はガンの問題もあります。
創を早く治すことで炎症が落ち着けばガン化のリスクを抑えることもできるではないかと期待しています。
- 治療を検討されている患者様とご家族へメッセージをお願いします
-
久保:
「自家培養表皮」の治療は痛みを緩和し、全身状態の改善にも繋がるため、
やってみる価値があると思います。患者様やご家族にとっては不安が多いと思いますが、
かかりつけ医に「自家培養表皮の治療をやってみたい」と伝えてみてください。
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藤田:
治療だけでなく、経済的な不安も患者様ご家族にはあるかと思います。
「自家培養表皮」は表皮水疱症の治療については保険適用です。
また、表皮水疱症は指定難病ですので医療費助成や自治体の助成制度もあります。
総合病院には大抵相談窓口があり、そういった悩みも解決できますので相談してみてください。
- この新しい治療法を経験したことのない医師にもメッセージをお願いします
-
久保:
皮膚科の先生方ならばこの治療を行えます。
最初は小範囲から移植し、慣れたら広範囲という治療戦略をお勧めします。
この治療で重要なことはチーム医療です。
当院の場合、この治療を行う前は整形外科など他科の医師と連携を取ることはあまりありませんでしたが、
今回の治療をきっかけに、診療科を超えて連携する体制ができました。
-
藤田:
私は周りに助けてほしいとSOS を出して協力していただきました。
栄養士にも、感染対策の看護師にも助けていただきました。
チームで関われる病院であれば問題ないと私も思います。
- ありがとうございました。
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