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2024年10月から新しい白斑治療がはじまりました!
再生医療「メラノサイト含有自家培養表皮」を用いた治療です。
白斑全体の約60%を占める「尋常性白斑」のうち、長期間にわたり白斑が変化しないものは、白斑部にメラノサイト(色素細胞)を供給することで治癒することが知られており、既存治療として患者さん自身の非白斑部の皮膚のメラノサイトを移植する外科的治療(吸引水疱蓋形成術、点状全層皮膚移植術、スマッシュグラフト)が行われています。 しかし、これらの治療は植皮が生着した場合は色素再生率が高いものの、移植のために切除された箇所がきずあとになったり、移植された箇所にまだらに色がついてしまうなどの課題もあります。また、大きな白斑については、より多くの皮膚が必要となるため、治療が難しいという状況です。「尋常性白斑」以外の白斑疾患についても、一般的な治療法が確立されていません。
イタリアではDe Lucaという大学の研究者達がメラノサイトが含まれる自家培養表皮を白斑患者に用いる治療を1990年代から始めていました。この技術を日本に取り入れて開発したものがメラノサイト含有自家培養表皮になります。 大やけどなどの治療に用いられている自家培養表皮は、1975年に米国ハーバード大学のグリーン教授らが見つけ出した、特殊な細胞「3T3細胞」を用いて、表皮細胞を効率的に培養する方法で作られています。1980年代には、米国、欧州、日本などで自家培養表皮による治療が行われており、De Luca博士らはグリーン教授のもとで培養方法を学び、表皮細胞だけでなくメラノサイトも併せて培養する方法を開発したのです。
* Michele De Luca, M.D. 再生医療における表皮幹細胞生物学の世界的権威。重症熱傷の治療のために欧州で初めて培養表皮幹細胞の移植を行った。 Modena and Reggio Emilia大学教授、イタリア
今までの外科的治療法との違い
今までの外科的治療(自家(患者さん自身の)皮膚移植)では、再生医療であるメラノサイト含有自家培養表皮と比べて、より大きな皮膚が必要でした。 メラノサイト含有自家培養表皮を用いた治療では、患者さんの皮膚を少しだけ採取、国から承認を受けた工場内の培養室で細胞を増やし(培養)して表皮細胞シートを作製します。 このため、採取した部位の傷の治りが比較的早く、患者さんのご負担が減ります。患者さんご自身の細胞を培養するのですから、拒絶反応が起きにくいのも特徴です。 また、手のひら大の長方形シートに成形されていますので、液体のように流れ落ちることなく、ガーゼで保護しながら患部にしっかり固定されます。 一方で、白斑部を含まない場所から皮膚組織を採取する手術と、培養した表皮細胞シートを移植する手術(約5週間後)の2回の手術が必要になります。
保険適用
メラノサイト含有自家培養表皮は、国から製造販売承認を受けた 再生医療等製品であり、保険が適用されます。高額療養費制度の対象にもなりますので、自己負担額は6~25万円程度(2024年12月時点)となります。
手術について
最初に行う「皮膚採取」は、局所麻酔下で親指の爪ほどの大きさの皮膚を紡すい形に採取して縫合する手術です。 日帰り手術が可能です。
表皮細胞シートの移植手術では、数日から1週間程度入院します。 退院後は移植した培養表皮に問題がないか、定期的に外来受診でチェックが必要です。 特に移植後1カ月は注意が必要になります。
尋常性白斑: 後天性脱色素斑の代表。全人口の約0.5~1%が罹患している後天性難治性脱色素疾患。 神経に沿って白斑が現われる「分節型」と、そうでない「非分節型」に分けられる。20~30%の患者で家族にも発症がみとめられる。 病因として、自己免疫疾患、酸化ストレス、自律神経バランスの破綻などがあげられます。
Vogt-小柳-原田病: ブドウ膜炎、髄膜炎、難聴を合併する。メラノサイトを含むブドウ膜、髄膜、内耳、皮膚、毛根などへの免疫反応が原因といわれています。
化学物質による完全脱色素斑: 工場などでフェノール誘導体と呼ばれる物質に大量に接触した労働者に白斑が発生した報告や、 メラニン生成抑制物質であるロドデノールを配合した薬用化粧品による白斑などがあります。
まだら症: 前額部、前頭部の白毛および白色斑が特徴。四肢、体幹では地図状の白斑を生じる。 生まれた時から存在し、拡大、縮小しない。