自家培養軟骨移植術について
2. リハビリ
リハビリは、患者さん一人ひとりの症状に合わせた動作を医師や理学療法士の指導の元におこないます。最初は「B 可動域訓練」です。これは、ひざが固まり曲がりにくくなることを防ぐために関節の曲げ伸ばしをおこなう訓練です。これにより、可動域の低下を防ぎ、関節の腫れを軽減するとともに軟骨の修復を促進します。毎日少しずつ曲げる角度をつけていきます。さらに、筋力低下を補うための「D 筋力トレーニング」や関節の安定性回復のための「E 協調性トレーニング」をおこないます。また、少し経ってから手術をした足に徐々に荷重を掛けていく「C 荷重歩行訓練」をおこない、移植した軟骨の増殖や成熟を促します。
入院前
術後の回復を早めるため、手術まで足の筋力を鍛えておきます(特に手術前の4週間)。
手術直後
全身麻酔が切れると、手術部位が痛みます。ひざは包帯と固定装具(A)で固定されていて動かすことはできません。体調により気分が悪くなったり、熱が出たりする場合もあります。
術後6週目まで(移植した軟骨の硬さ:ゼリー)
リハビリを早く始めると、その分回復が早くなり、筋力低下を防ぐことができます。術後4週目までは、「B 可動域訓練」「D 筋力トレーニング」「E 協調性トレーニング」を、回復状態に合わせたメニューで続けます。
(つづきを読む)
最初は、ベッドの上でできる簡単なメニューから始めます。軟骨の修復促進にも効果がある「B 可動域訓練」は移植した箇所に負担を掛けない「他動運動(第三者の手や器具などの外力によって動かすこと)」から開始し、術後3カ月程度まで続けていきます。ひざが腫れたり、動きが悪かったりする場合は、マッサージや超音波治療などをおこないます。「D 筋力トレーニング」は移植した箇所への負担を考慮し、負荷が掛からないSLR(足上げ)や大腿四頭筋セッティング、体幹トレーニングなどをおこないます。ひざ関節のみならず、股関節、足関節、上肢、体幹、心肺機能などの患部以外のトレーニングも重要です。「E 協調性トレーニング」は、タオルギャザーなどから始めます。
抜糸は、術後1〜2週間ほど経過してからおこないます。足を固定する「A 装具」は術後数週間で外されます。
術後3〜4週目から「C 荷重歩行訓練」を始めます。最初は、松葉杖での歩行訓練と、治療した足に少しずつ荷重を掛ける「部分荷重歩行」をおこないます。体重計を使い、最初は1/3荷重、2週目は1/2荷重など足への負荷を徐々に重くしていくことで、少しずつ健常足とのバランスを合わせていきます。荷重の負荷を増やしていくのと同時に、片脚立位(開眼・閉眼)、不安定な土台上でのバランス保持などをおこないます。「D 筋力トレーニング」はレッグプレスや自転車エルゴメータなどを用いて、移植箇所に過度な負荷が掛らないように調整します。
術後4〜6週程度で退院となり、退院後は自宅や病院のリハビリルームに通ってリハビリを続けます。自宅でのリハビリにおいても、医師や理学療法士の指導を守り、無理をしないことが大切です。
6週〜3カ月目(移植した軟骨の硬さ:ゼリー)
自宅やリハビリルームで、引き続き「B 可動域訓練」「D 筋力トレーニング」「E 協調性トレーニング」をおこないます。
(つづきを読む)
術後6週目くらいで松葉杖を外し、自立歩行の訓練をおこない、「部分荷重歩行」から、全体重を掛ける「全荷重歩行」にシフトしていきます。回復状態の良い方も、ひざに無理の掛かる「階段の上り下り」「駆け足」「長時間の歩行」は原則禁止です。生活する上で、階段を避けられない方は、医師に十分相談してください。また、「急に立ち上がる」「急に方向転換する」などの「急な動作」も避けてください。
3〜6カ月目(移植した軟骨の硬さ:ゼリーからパン生地)
「B 可動域訓練」「D 筋力トレーニング」のリハビリメニューは術後3カ月程度で終了します。あとは、医師や理学療法士と相談して、自分に合ったトレーニングをおこなっていきます。「C 荷重歩行訓練」「E 協調性トレーニング」は継続します。
「階段の上り下り」や「床に座る」などは、ゆっくり様子を見ながら始めます。「急に方向転換をする」「急に立ち上がる」など、ひざに負担を掛ける動作は禁止です。
6カ月〜1年目(移植した軟骨の硬さ:パン生地から消しゴム)
術後半年以上の時期は、回復に個人差が大きく出てくるため、最も注意が必要です。
(つづきを読む)
回復が著しい患者さんの中には「元の生活に戻った、完治した」と思われる方もいらっしゃいます。しかし、「自家培養軟骨」が完全な軟骨組織になるまでには一定の期間が必要であり、この期間が短くなることはありません。ここで無理をすると、定着しかけた「自家培養軟骨」が剝がれ大変なことになってしまいます。