

村上:
子供の服の裾直しをしようと思い、衣類用接着剤を使って固定しようとしました。
なかなか接着剤が出てこなくて上からのぞきこみながら強く押したら、中蓋が取れ、接着剤が左目に飛びこんできました。
もうパニックで。とりあえず水でバシャバシャ洗いましたがあまり取れず、接着剤が目に残った状態で急いで病院に行きました。
病院で洗浄してもらい、固まった接着剤を取り除いてもらいましたが、角膜をだいぶ傷めてしまったようで、充血がひどく痛みもおさまりませんでした。
最初に駆け込んだのは町のクリニックでしたが、すぐに入院が必要だと言われ、別の総合病院を受診しました。
そこでは、すぐに炎症を抑えるためにステロイド投与を行い、2週間ほど入院しました。当時はステロイドの副作用で顔がパンパンに腫れて心配でした。
目の方も最初は傷が治れば回復するだろうと簡単に考えていましたが、そうは行かないことが分かってきてとても不安になりました。
目は最初、透明だったのですが、徐々に白く濁っていきました。
簡単に説明すると、目の黒目と白目はきれいにすみ分けがあります。
黒目(角膜)には角膜の細胞がいて、白目(結膜)には結膜の細胞がいます。
白目と黒目の境には目に見えない柵が黒目と白目を分けていて、そこに角膜上皮のもとになる幹細胞がいます。
そこに有害な物質(村上さんの場合はアルカリ性接着剤)が入るとその柵が壊れてしまいます。
その柵の決壊により、白目の結膜細胞が黒目に侵入してきて透明性が落ち光の散乱が起こって、まぶしさがでてきます。
角膜と結膜の境目に存在している角膜上皮の幹細胞が障害を受け、角膜上皮細胞を作れなくなる、それがLSCDです。
村上:
最初に先生に診ていただいた時は、いまは治療法がないけど、近いうちに治せるようになるからね、と言われたことしか覚えていなくて。
右目は見えていたので、ひどく不自由ということもなかったので気長に待つことができました。