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自家培養角膜上皮
ドクター・患者さん インタビュー

広島大学病院 眼科 診療教授
広島大学大学院医系科学研究科 視覚病態学 准教授

近間 泰一郎 先生 <Chikama Taiichiro>

近間先生


近間 泰一郎 先生 <Chikama Taiichiro>

平成 3年 富山医科薬科大学医学部医学科卒業

平成 3年 山口大学医学部附属病院研修医(眼科)

平成 5年 山口大学医学部附属病院助手(眼科)

平成 7年 宇部興産中央病院眼科医師

平成 8年 山口大学大学院医学研究科入学

平成 11年 山口大学大学院医学研究科修了、医学博士(山口大学)

平成 11年 山口大学医学部助手(眼科)

平成 12年 山口大学医学部講師(眼科)

平成 13年 アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティ大学医学部眼科客員講師

平成 16年 山口大学医学部附属病院講師(眼科)

平成 19年 山口大学医学部准教授(眼病態学)

平成 21年 山口大学大学院医学系研究科准教授(眼科学)

平成 23年 広島大学大学院医歯薬学総合研究科准教授(視覚病態学)

平成 24年 広島大学大学院医歯薬保健学研究院准教授(視覚病態学)

平成 29年 広島大学病院 診療教授

平成 31年 広島大学大学院医系科学研究科准教授、広島大学病院診療教授 現在に至る

【所属学会】

日本眼科学会 日本角膜学会(評議員) 日本角膜移植学会(理事) 日本眼感染症学会(評議員)

日本眼科手術学会 日本眼内レンズ屈折手術学会 日本コンタクトレンズ学会 日本眼炎症学会

日本結合組織学会(評議員) 日本人類遺伝学会 日本光線力学学会(評議員)

The Association for Research in Vision and Ophthalmology

The European Society of Cataract and Refractive Surgeons

公益財団法人日本アイバンク協会(理事)公益財団法人ひろしまドナーバンク(評議員長、広報委員長)

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近間先生、村上さんの場合、自家培養角膜上皮移植術の後、深層層状角膜移植術(DALK)を行いました。もう少し詳しく教えてください。
近間: DALK手術は、初めから一連の手術計画に組み込んでいました。 村上さんの場合、自家培養角膜上皮移植術で角膜の表面(上皮)をきれいにしても、その下(角膜実質)にも濁りがあったので、上皮移植後の目が安定した約1年後に濁りを取るためのDALK手術を行いました。 DALK手術ではコラーゲン層を移植します。16カ所を縫合し、だいたい2年をかけて少しずつ抜糸していきます。 縫合には髪の毛より細いナイロン糸を使いますが、ナイロンは生体反応が軽く、残しておいても問題がないので、乱視や炎症反応がない場合にはそのままにしておくこともあります。
自家培養角膜上皮は、非常に薄くとても破れやすいので慎重にシートを表面に貼り付けて、黒目と白目の境目をぐるりと1本の糸で5〜6カ所固定します。 最後に外的攻撃の抑制やシート生着のために、保護用のコンタクトレンズを入れます。増殖力のある細胞を移植部に出来る限り多く残すことがとても大事なので、とにかく徹底して保護します。 DALK手術は全身麻酔で1時間15分程かかりました。 村上さんの場合には、実質の深い部分の変化が強いと角膜穿孔を起こす可能性があったので、DALK手術の時は、やはりどきどきしました。 手術中に粘弾性物質を使って透明な上皮部分を乾燥から守る工夫もした結果、現時点でも高い透明性が維持できています。
村上さんのように併用手術がある場合には、手術を行う順番など、より良い方法を見出すための議論がまだまだ必要です。 自家培養角膜上皮移植は新しい治療法で、まだ治療実績も多くないので、それぞれの医療機関での症例結果を持ち寄って医師間で議論し、より良い治療につくりあげていくことが必要です。
村上: 自家培養角膜上皮移植術の時は、部分麻酔だったので痛みとまぶしさがつらかったです。手術中、両目を開けてといわれるのですが、まぶしくて開けていられませんでした。
近間: そうですね。手術している時も、これはまぶしいだろうな、大変だろうなと思いました。 自家培養角膜上皮術は全身麻酔をした方がいい場合もありますが、今回は、手術中に目を動かしてもらいたかったので局所麻酔を使いました。 がんばっていただきありがとうございます。 こちらは1時間弱の手術でした。
村上さん、自家培養角膜上皮移植術の治療費はどの程度でしたか。
村上: 手術をする前に高額療養費制度の申し込みをしていたので、実際に支払ったのは10万円くらいです。 本当に助かりました。後で明細を見たら、確かトータルで1,000万円くらいだったと思います。 そんなにかかるのかとものすごく驚きました。保険と高額療養費制度が使えたので本当にありがたかったですね。 友達に目の手術のことを聞かれるのですが、たいてい手術内容よりも金額の方が話のネタになります(笑)
近間: 前もって書類を提出しておくと、最初の支払いから負担を最小限にできるので良いですね。それをしなかったら、3割負担では300万円くらい払わないといけませんから。
近間先生、自家培養角膜上皮移植術についてご意見を聞かせてください。
近間: 村上さんには、ずいぶんお待たせしてしまいましたが、やっと信頼できる治療法が提供できるようになったと思います。 私が30年前に描いていた夢の手術が、自分の手で施術できるようになりました。
自家培養角膜上皮は、シートの上に細胞をまくのではなく、細胞でシートができているというところがとても魅力的でした。 そして自分の細胞を使うので、拒絶反応がないのが最大の売りだと思います。 自分の細胞層をそのまま移植しますから透明性もとても高い。 現在、LSCDにとって最も良い治療法だと思います。 また、目の組織を必要最小限しか傷つけないから、目にやさしい。 村上さんは痛いとおっしゃっていましたが、他の方法はたぶんもっと痛いと思いますよ(笑)
とにかく、これまで行われてきた手術の成績や術後の様子と比べると、まったく次元の違う治療で、それが保険診療でできることは、この病気で困っている人にとって大きな福音だと思います。
近間先生、この手術は難しいものなのでしょうか。またこの治療を行う医師は他にもいらっしゃるのでしょうか。
近間: 私は現在までに5例の治療実績があり(2024年1月時点)、村上さんは3人目の患者さんでした。 この手術を行うには講習を受ける必要がありますが、角膜移植経験がある医師であれば技術的に特に難しくはない手術だと思います。 (全国講習会実施済施設:48施設、認定医師:約70名 2024年1月時点)
村上さん、近間先生、この治療法について、この治療を検討されている方にメッセージをいただけますか。
村上: 移植手術と聞いた時、拒絶反応が怖く、治療してもすぐにだめになってしまうのではと思っていました。 でも実際は、自分の細胞で角膜上皮が作れて、拒絶反応もなく移植でき、まだ完全ではないけれど、また目が見えるようになりました。 本当にありがとうございます。きっとこれからは症例数も増えて、さらに安心して手術が受けられると思います。 少し残念なのは、この治療法がまだ一般的に知られていないことです。 クリニックの先生などには情報が行き渡っていないように感じます。もっと知名度が上がり、患者さんにも広がっていけばいいなと思います。
近間: おっしゃるように、まだよく知らない先生方もいると思います。 私たちももっと啓発して広げていきたいと思います。患者さんが相談できる場所やシステムも提供していきたいです。
また、いままで治療法がなくて、治療を諦めていた方もいらっしゃると思います。 例えば化学熱傷で片目だけを損傷した患者さんは、片目が見えるからと放置してきた方もいらっしゃると思います。 そういう方々こそ一度相談していただきたいです。視機能が残っているのなら、この治療を行う価値は充分あります。
本日は大変貴重なお話をありがとうございました。

(取材:2024.1)

ドッグトレーナー(公認訓練士) 村上愛犬警察犬訓練所
ジャパンケネルクラブ公認訓練士 日本警察犬協会公認訓練士 日本シェパード犬登録協会公認訓練士

村上 早苗 氏 <Murakami Sanae>

村上さん 


村上 早苗 氏 <Murakami Sanae>

1994 年社団法人シェパード犬登録協会においてメス組優勝をはじめ、ジャパンケネルクラブ、日本警察犬協会、日本シェパード犬登録協の 各競技会において優勝入賞多数。

平成10年、主婦の友社出版本「犬のしつけとトレーニング」の監修を務める。

治療歴:アルカリで左目を受傷。2021年 9月、左目に自家培養角膜上皮移植。

その後、DALK 手術で濁りを解消。

●自家培養角膜上皮移植 採取:2021年8月 移植:2021年9月

●深層層状角膜移植術(DALK)  移植:2023年5月

近間先生からみなさまへ

 村上さんからみなさまへ

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