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ドクター・患者さんインタビュー

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月村 泰規 先生

月村 泰規 先生 <Tsukimura Yasunori>

月村 泰規 先生

  • 北里大学北里研究所病院 人工関節・軟骨移植外来
    (人工関節・軟骨移植センター)
  • 整形外科部長、リハビリテーション科部長、
    人工関節・軟骨移植センター長、リハビリテーションセンター長
  • <専門>
  • 整形外科一般、膝・足関節などの関節外科、脊椎外科、スポーツ医学
  • <資格等>
  • 日本整形外科学会整形外科専門医 日本整形外科学会認定スポーツ医
  • 日本体育協会認定スポーツドクター 日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
  • 身体障害者福祉法指定医 難病指定医
先生のいらっしゃる「北里大学北里研究所病院 人工関節・軟骨移植センター」についてお教えください。
当院は人工関節センターが先に開設されました。2012年までは自家培養軟骨移植術はありませんでしたので、それまでは人工関節を主にした治療をおこなっていました。人工関節は今なお進化している良い治療方法ですが、当時、私が残念に感じていたことは、治療選択肢がそれしかなかったことです。人工関節にはまだ少し早いのではないかという患者さんにも、使わざるをえない場合があり、どうにかならないものかと考えていました。2013年に自家培養軟骨移植術が実施可能になりました。そして、薬や運動療法などの保存治療やその他の良い治療方法も出てきたこともあり、今では軟骨損傷を含めた膝関節症の治療選択肢がぐんと広がりました。自分のひざを残したいと考える患者さんにも、靱帯再建や骨切り術を併用することで希望に沿った治療方法が提供できるようになりました。さまざまなひざの悩みを持つ患者さんに、細かく対応できることが当センターの最大の特徴です。
自家培養軟骨移植術をはじめられた経緯をお聞かせください。
当センターはスポーツ選手が多く訪れます。離断性骨軟骨炎などの軟骨損傷が多いのですが、以前は、そのような場合は骨軟骨柱移植術で治療をおこなっていました。しかし大きな欠損の場合などは、その治療方法では損傷範囲を被覆しきれないことがありました。また、治療後の移植面の軟骨が母床の軟骨より薄く、軟骨の下の母床の骨がデコボコしてしまい、術後の選手活動に痛みなどの影響を危惧することもありました。今は自家培養軟骨移植術がありますので、こうした心配はなく、軟骨治療をおこなうことができ、術後の成績も良くなりつつあります。
この手術はどのような患者さんに適していますか。
例えば、若いスポーツ選手で、ケガによる軟骨損傷の患者さんなどに適していると思います。20代の方は軟骨が白くて弾力性もあり、関節液の中ではつるつるしていますが、年を重ねると軟骨の質が低下し、黄ばみが出たり線維の構築が緩んで弱くなってきます。もちろん個人差はありますが、目安として45歳ぐらいまでであれば、軟骨の治りは良いと考えています。高齢の方にも治療はできますが、その場合には軟骨治療に加えて、骨を切って向きを変えるなどして最良の結果が得られるように工夫をします。一般的には、軟骨欠損の周りが痛んでいなければ自家培養軟骨移植術は可能です。ひざの内側だけが痛んでいて、ジョギングやテニスなどのスポーツを続けたい方などは、自家培養軟骨移植術を受けることで人工関節では不可能なスポーツ再開も夢ではなくなりました。
この手術を受ける患者さんが術前・術後に注意するべきことはありますか。
術前の注意点としては、感染リスクを避けるため関節への注射を1〜2カ月前にはやめていただきたいです。術後は2週間ひざを固定し、6週間から8週間は全体重をかけることができないことから筋力が落ちてしまいます。そのため、術前にしっかり筋力トレーニングをしておくと早期回復が望めると思います。
術後は、滑って患部を打ったりしてしまっては大変ですから、慎重に荷重を増やしていきます。とにかく医師の指導を守っていただくことが大切です。医師からも患部の状況をわかりやすくしっかり説明し、患者さんの理解を得るように努力しています(移植直後はゼリー、6カ月で消しゴムの硬さになるなど)。
月村先生はリハビリテーションセンター長でもいらっしゃいますが、患者さんのリハビリテーションはどのようにおこなわれるのでしょうか。
軟骨を移植する場所や治療内容によってリハビリは異なります。大腿骨や脛骨を治療された場合は、術後すぐにひざを固定した状態で足の上げ下げ(SLR)程度の運動をおこないます。そして2週間の固定終了後、状態を見ながら関節を動かしていきます。ひざのお皿の軟骨やその対面に移植した場合には、少しゆっくりリハビリをおこないます。リハビリのメニューは患者さんのひざの状態にあわせておこないます。この手術に詳しい理学療法士と連携して考え、密にコミュニケーションをとりながら実施しています。職場復帰については、デスクワークで松葉杖を使って活動できる患者さんはあまり問題ありませんが、重労働の方、スポーツをされている方については、6カ月間は自粛いただく必要があります。ですから所属されている会社と手術前にしっかり相談することが大事ですね。また当センターでは、移植手術前に、ご自身のひざの軟骨採取時の関節鏡写真を見ながら説明し、理解を深めていただいています。
この手術を受けた患者さんで印象的だった方はいらっしゃいますか。
23歳のアメフトの選手ですね。彼はこの手術を受けた6カ月後にアメフトに復帰していました。幸い、軟骨には問題はありませんでしたがかなり驚きました。6カ月間でも、治りが良い人は復帰できてしまうのですね。しかし、同じように若くても治りが悪い方もいらっしゃいます。そのような方には事前にしっかりお伝えしていますが、少しでも良くなることを目指して緻密に最適な治療をおこなっています。再生医療を用いた軟骨治療は新しい治療法なので、まだパーフェクトではありませんが、優れた治療法であることは間違いないです。ひざの調子が悪いと感じられている方は、とにかく悪くなりすぎる前に来院していただくことが肝要です。早めの治療であれば予後も早く良くなりますから。
自家培養軟骨移植術や再生医療の課題や今後への期待をお聞かせください。
自家培養軟骨移植術は、移植したばかりの柔らかい軟骨を今よりしっかり固定できるようになれば良いと思います。また移植した軟骨が下骨により早くくっつけば、術後に剥がれる心配がなくなります。リハビリを早められ、患者さんは早期社会復帰できます。また、医師の立場からですが、移植した軟骨はその後どうなっていくのか、元通り機能しているのかなどにも興味があります。特に高齢の患者さんの軟骨が気にかかります。高齢でもよりよい培養軟骨を造る方法が開発されればそのような不安もなくなりますから、さらなる研究開発に期待しています。当センターでは軟骨を移植する際に、隙間なくしっかり埋め込むことで結果がよくなるのではないかと考えています。現時点で患者さんの経過は良好ですが、さらにさまざまな検討を重ねて最適な治療を目指していきたいです。
再生医療については、骨髄幹細胞や脂肪幹細胞、PRP(自己多血小板血漿)などによって、どこまで治療できるのか注目しています。細胞もまた細胞間でコミュニケーションしていて、例えば、骨が軟骨細胞に働きかけることで修復が促進されるなど、軟骨細胞の周りの環境も治療の重要な要素のひとつかもしれないと私は考えています。さらに、機能する半月板が再生できれば、ひざの治療はよりよいものになると思います。半月板がなければ、軟骨を治療しても、また軟骨が痛んでしまいますからね。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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