再生医療についての色々な情報
きれいな小川や池にすむヒルに似た「プラナリア」という生き物がいますが、プラナリアはからだをいくつに切られても、
それぞれの断片が1匹のプラナリアに増殖します。なぜ、そんなことが可能かというと、
プラナリアにはどんな細胞にも分化することができる幹細胞があるからです。
しかし、人間はからだの一部を失ったらプラナリアのように再生することはできません。
もし、人工的にどんな細胞にも分化することができる細胞を作り出すことができたら、
病気や事故で失った組織や臓器を再生することができるかもしれない。そんな夢を実現する可能性を秘めているのが「iPS細胞」です。
人間の細胞も受精卵の時点では、骨や皮膚や心臓などどんなものにもなれる能力(全能性)を持っています。
なぜなら、人間の骨も臓器も皮膚もすべて受精卵から分化したものだからです。
ところがいったん分化した細胞は、基本的に別の種類の細胞に変化したり、もとの幹細胞に戻ることはありません。
ES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)は、受精卵が胎児になるプロセスで、
分裂が始まった後の胚盤胞(はいばんほう)の中にある細胞を取り出して培養されたものです。
しかし、これは赤ちゃんとなる受精卵を使って作るため、倫理的な問題がありました。
「iPS細胞」が画期的なのは、皮膚などの細胞に遺伝子操作を加えることで「ES細胞」のような幹細胞になることです。
これなら受精卵のような倫理的な問題はありません。一方、遺伝子操作をおこなうことによる安全性(ガン化のリスクなど)は、
今後の課題となっており、日々研究が進められています。
ES細胞やiPS細胞は、再生医療に用いる細胞としてだけでなく、
病気の発症する仕組みや病気の原因調査、新薬の開発、細胞を用いた治療の研究など様々な分野での応用が期待されています。
例えば、パーキンソン病や角膜上皮幹細胞疲弊症、心不全の患者さんの治療にiPS細胞を使用する試みが始まっています。
また、iPS細胞を使った治療をより安価で安全に行うために、iPS細胞のバンキングも行われています。
今後も世界中で研究され、これからの医療を変えていくことでしょう。