また、骨化の原因は骨膜であること、特に10代の患者さんに発生しやすいことがわかってきました。 現在は、骨膜ではなく人工のコラーゲン膜で固定するため、移植後の膨らみや骨化の心配はありません。 当科では10代の患者さんから60代の患者さんまで幅広く治療しています。患者さんのひざの状態に合わせて適切な治療を組み合わせています。
内尾:これまでに1,200例以上の手術が全国で実施されています。 9割以上の方は症状が改善しています。有害事象についても対応できることがわかっています。 ですので是非、日本初の軟骨の再生医療をお勧めしたいと思います。 他に治療法がないということも患者さんにはお伝えします。 私が研修医の時にはこのような治療はなかったので、活動的な壮年期を有意義に過ごせなかった患者さんを多く経験しました。 軟骨の再生医療が可能となり、人生が変わった人も多いので、この治療をうけて自分の夢を叶えてほしいです。
内尾:赤ちゃんでも生まれてくるのに10月10日かかります。再生軟骨は自分の軟骨ですが、植えた時は赤ちゃんの軟骨です。 それを体の中で育て、やがて成熟した軟骨になります。焦らずゆっくりしっかりリハビリをやっていきましょう。 必要なサポートは私たち医療スタッフがしっかり行いますので一緒に頑張りましょう。 回復には個人差がありますので、先生としっかりと相談しながら不安なことがあればご相談ください。
内尾:それほど多くありません。仮にうまくいかなくても、軟骨があればもう一度チャレンジできますので、他の治療の選択肢がなければ、この治療を受けるべきではないでしょうか。 最初にお伝えしたように、全体的に術後成績は良好です。自家培養軟骨移植術は細胞を採取する初回の関節鏡の手術と、自家培養軟骨を移植する2回目の切開を伴う手術があります。 関節鏡手術は傷が小さいため負担は少ないのですが、2回目の手術では切開しますので、傷が治る過程でひざが腫れたり、痛みが出たりします。 また、移植した直後の自家培養軟骨はゼリーのように柔らかく、パン生地ぐらいの硬さになるまでに6ヶ月ほどかかります。 したがって、硬さに併せて荷重を調整し、移植部に無理な力がかからないようにします。 他方でひざが固まらないように積極的にひざを動かして軟骨の成長を促すことも大切です。 医師と理学療法士の指示に従って、日常生活に戻れるようリハビリテーションに励む必要があります。
内尾: いま日本では自家培養軟骨という軟骨の再生医療が保険診療で認められています。 これまで適切な治療を受けられなかった方、あきらめていた方、そういった方は整形外科専門の医療施設にご相談なさって健康なひざを取り戻してください。 人生100年時代といわれる現代です。これからひと花もふた花も咲かせてください。
内尾先生と患者さんのインタビュー記事はこちら
島根大学医学部 整形外科学教室
内尾 祐司 先生 < Uchio Yuji >
【所属学会】日本整形外科学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会、日本手の外科学会、ISAKOS SICOT AAOS、運動器の健康・日本協会
【認定医等】医師免許証下附(1986年)、整形外科専門医(1993年)、日本整形外科学会認定スポーツ医(1995年)、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医(2008年)
【博士(医学)の学位授与】1995年5月10日 医学博士(乙第101号) 島根医科大学
【主たる研究分野】膝関節外科、スポーツ整形外科、手の外科