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「尋常性白斑」をメラノサイト含有自家培養表皮で治療

皮膚 2026.04.09

30代 女性 会社員

Eさん(患者さん)

Eさん

 

大学時代に使用した化粧品がきっかけで尋常性白斑を発症。クリニックで塗り薬や光線療法を受けていたが十分な効果が得られず、紹介状を持って名古屋市立大学を受診。

2022年1月と2023年1月に自由診療で自家培養表皮による治療を受ける。現在も近隣のクリニックで定期的な光線療法等を受けている。

尋常性白斑とは?

皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層によって構成され、表皮の95%が表皮細胞、残りの5%にメラノサイトという色素細胞が含まれています。

メラノサイトは表皮の1番下の層である基底層と毛の根元の膨らみがある部分の毛球に存在します。基底層のメラノサイトは、表皮細胞にメラニン顆粒を供給することで紫外線から皮膚を防御する役割を担っています。白斑(はくはん)は、このメラノサイトが何らかの原因で減少・消失または機能が失われるなどして、皮膚が白くなる病気です。

白斑は先天性か後天性かによって複数に分類されますが、代表的なものは尋常性白斑で白斑全体の約60%を占めます。

詳しくはこちら➡「尋常性白斑診療ガイドライン」
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/Hakuhan2025.pdf

  • 本日はお時間をいただきありがとうございます。本日は色素細胞(メラノサイト)を含んだ自家培養表皮を使った難治性白斑の治療を受けられたEさんに、手術を受けることになった経緯や術後の経過、治療を受けた感想などを伺いたいと思います。

    まずはじめに、自家培養表皮による治療はいつごろ受けたのでしょうか。お仕事で出張などされており、お忙しいようですが、どのようなお仕事なのでしょうか。差し支えなければお教えください。

    Eさん:1回目は2022年1月、2回目は2023年1月でした。当時、接客業務を行っていましたが、コロナ禍で在宅勤務となった為、手術を受けることができるタイミングだと思い、手術を受けました。その後、転職して、現在は会社員として毎日オフィスに出勤しています。

  • Eさんは難治性の白斑で長年お悩みだったと聞きました。白斑が出始めた頃の状況は覚えていらっしゃいますか。

    Eさん:発症したのは化粧品を使い始めた大学生の頃です。大学生になった記念に良いものを揃えようということで、デパートではじめての化粧品を母に買ってもらいました。使い始めは問題なかったのですが、しばらく使っていたところ、ある朝、メイクをしようとして「あれ?」と白斑に気付きました。

     

    左の眉毛が白くなり、白髪も出てきて、首、額など、目につくところが気になりはじめたので両親に相談しました。肌に日々付けるものは、幼少期から使用し続けているクリームを除くとこの化粧品類しかなかったため、原因は化粧品しかないと思いました。

     

    当時はまだ化粧品による白斑の被害が発表されておらず、化粧品の使用を続けていたため、白斑が進行していったと思います。余った化粧品を塗ったところも白斑になりました。寝ている間に化粧品が垂れてしまうことにより、額のまわりも白斑になりました。

  • その後、塗り薬や飲み薬、光線療法などを受けられたかと思います。実際にはどのような治療でしたか。

    Eさん:大学生の時は親元を離れていたため、実家へ帰省した際に、地元の皮膚科に通っていました。

     

    大学を卒業して1年間はフランスへ留学し、1-2ヶ月に一度は現地の皮膚科でビタミン剤を処方してもらい、経過観察のみで治療は中断していました。

     

    帰国後に東京で就職し、皮膚科のクリニックで光線療法を週2回程度の頻度で受け続けましたが効果はありませんでした。光線を照射しても赤くなってもとに戻るという状況を繰り返していました。ビタミン剤を飲んだり、ヒルドイドで保湿したりもしました。光線療法を受けている時は併せてステロイド軟膏も使用していましたが、かゆみ、ひりつきが出て辛く、かつ仕事をしながらの通院は大変でした。

  • なるほど、そして自家培養表皮による治療を受けたのですね。どのように治療を知って、名古屋市立大学を受診することになったのでしょうか。

    Eさん:白斑症状の発症以来お世話になっている皮膚科の先生に、白斑の状態を診断していただいたのですが、治療法がないという状況でした。そこで先生から一番新しい治療を行っているという名古屋市立大学の鳥山和宏先生をご紹介いただきました。

  • 主治医の鳥山先生から再生医療を勧められた時、不安はありませんでしたか。この治療を受けると決められた理由を教えてください。

    Eさん:最初は名古屋市立大学の皮膚科の森田明理先生を受診し、光線療法の選択肢も示されましたが、最新の治療をされているという形成外科の鳥山先生に繋いでいただきました。皮膚の再生医療は大やけどにしか使えないと思っていましたし、培養という言葉も知りませんでした。ましてや白斑が再生医療で治療できるなんて。鳥山先生から培養表皮について詳しくお話を伺ったところ、まったく新しいアプローチということでしたので期待しました。

     

    もちろんリスクも不安もありますし、東京から名古屋に通わなくてはなりませんので、時間もお金もかかります。即決はできませんでした。当時勤めていた会社の理解を得られたため、鳥山先生に治療を受けたいと伝えました。

     

    私は学生の時分にこの症状が発症してしまったため、多感な時期に歯がゆく辛い思いをかさねてきたことから、どうにか治したいという強い気持ちがありました。四季折々に展開される各メーカーの魅力的なコスメを試したい気持ちはありながら、一般的な化粧品ではカバーメイクのように白斑をごまかすことができなかったり、通常ならば喜ばれるであろう美白成分がどのように自分の肌に影響するのかが怖かったりして、なかなか手を出すことができませんでした。カバー用のメイクは一般のコスメに比べると、どうしてもパッケージからしてデザインが魅力的ではありません。

     

    本来であればメイクをしたいところですが、とにかく白斑箇所と健常な肌の色の差をぼかす作業になってしまって。大好きな旅行も、素顔で対面できる気の置けない友人や家族としか行けなくなりました。新しい人と会うことすらも怖く億劫になっていたのです。とにかく治したい。そして、コロナ禍で在宅勤務中心となっていたため、しっかり治療するなら今だと思いました。

  • 具体的に、自家培養表皮の治療がどのように行われたか覚えている範囲で教えてください。まず、Eさんの白斑がない皮膚から切手大の皮膚をとるという手術を行い、その後、5週間ほどして色素細胞を含んだ自家培養表皮シートの移植が行われたと思います。

    その時はどのような感じでしたか。入院期間や、術前・術後の様子についてお教えください。

     

    Eさん:1回目も2回目も、皮膚採取時は日帰りだったと思います。大腿部から皮膚を取りました。5週間後に手術のため名古屋へ来ました。コロナが陰性であることをチェックし、全身麻酔は負担があるとのことで、局所麻酔で手術をしていただきました。1回目の手術で痛みが強かったため、2回目の手術時は麻酔クリームを使ってもらいましたがそれでも痛かったですね。具体的には白斑部分を薄く削る時と、培養表皮を糸で縫う時に強い痛みを感じました。額は特に痛かったので、手術中に体が動かないように四肢を固定され、看護師さんが手を握ってくれていました。いっそ全身麻酔で意識が無い状態のまま手術を受けたかったと、手術中何度も思いながら耐えていました。

     

    自分の治療については、優先して治したいところに培養表皮を移植してほしいと積極的に鳥山先生に要望を伝えました。目の周りと額、頬に対して、1回目が左、2回目が右の順で手術をしました。1回目よりも2回目の手術は、より広い面積を治療しました。首は手術をしていません。

     

    手術時間は1時間くらいだったと思いますが、人生で初めての手術で消耗しきっており、終わった時には全身汗だくでした。看護師さんに介助していただかないと、自力で立ち上がることもままならない状況でしたので、落ち着いて回復に専念できる個室でよかったと思います。2回目の手術の時は、あまりにも消耗しており術後20時間近くほぼ眠り続けていました。

     

    私は目元の皮膚も手術した関係で瞼が開かないよう完全に縫い付けられ視界が悪かったため、病院のコンシェルジュさんが買い物や洗濯などお世話してくださったのが有難かったです。コロナ禍で実家の両親も付き添えませんでしたし、実家から名古屋に来てもらう負担も考えると独りで耐えるしかありませんでした。

     

    1回目の手術時は、3日後には退院し、痛み止めとかゆみ止めを服用しながら仕事に復帰していましたが、寝ている間にひっかいてしまったようで目元から出血。急ぎ会社に事情を説明して休みを取得し、大急ぎで名古屋へ戻り、鳥山先生に診ていただきました。2回目は大事を取って1週間入院しました。

     

    手術をした場所のかさぶたがとれたのが約1ヶ月後でした。赤みが続いて、半年程度で落ち着いたと思います。術後半年は毎月、鳥山先生に診ていただきました。術後も自分でガーゼを貼付するなどの管理が難しいと感じました。

     

    現在は、3-4ヶ月に1回程度、鳥山先生に診ていただいています。今後は再び手術を行うなど大きな動きが無い限り、半年に1回くらいの受診でよいとのことです。

     

    鳥山先生はお優しく、快く治療の相談に乗ってくださいます。最新の光線療法についても教えていただき、都内で調べたところ複数クリニックがあったため、比較的通いやすいところに毎週通院しています。以前は週に2回、現在は週に1回通っています。2024年末に新しいレーザーの器械に変わり出力が高くなったように感じています(クリニックの看護師さん曰く、他の患者さんからも同様の反響が出ているとのこと)。

     

    出力効果が高すぎて、週に2回だとひりつきが残るため、今は1回にしています。治療する部位によっても効果は変わるようです。培養表皮を移植していただいたおかげで光線療法の反応がよくなってきています。瞼も周りと色調が少しずつ馴染んできました。

  • 入院中や術後にこまったことなど印象に残っていることはありますか。

    Eさん:顔の手術でしたので、傷をガーゼで覆われて周りがまったくみえないという状況が困りました。ガーゼをつけたまま日常生活を送ることが、とにかく不便でした。例えば、自分一人では頭を洗えないのです。術後1ヶ月は毎日シャンプーのために美容院へいきました。1ヶ月間はガーゼでの保護を続ける必要があり、シャワー時もはったままです。毎日ガーゼ交換し、刺激の少ないテープで貼り付けます。

     

    2ヶ月目からは多少楽になりましたが、それでもガーゼでの保護は一定期間継続でしたので、洗顔は慎重におこない、タオルは軽く充てるように注意していました。傷やガーゼの臭いも気になりました。術後の管理を考えて、2回とも冬に手術を受けることにしてよかったと思います。ガーゼの蒸れなども考えると日本の夏は厳しいのではないでしょうか。痛みについては、抜糸後はあまりありませんでしたが適宜痛み止めを服用していました。痛み以上に痒みの方が長らく続いたように記憶しています。

     

    手術前には想像できませんでしたが、実際に経験してみて大変さを実感したという思いです。また、平日に外来診療を受けるとなると、会社の有休も消化しなくてはなりません。

     

    手術後の姿に対して他人から心無いことを言われたり、ジロジロみられたりしたこともあります。ガーゼが動くことを懸念して、タートルネックのようなものは着れず、おしゃれも制限されました。

  • 治療から3年が経過していますが、移植した場所の状態はいかがでしょうか。

     

    Eさん:お陰様で培養表皮を移植していただいたところは光線療法の効果もあり、色がついてきています。ただし、部位によって効果が異なり、目の周囲は良好ですが、額は効果が不十分と感じています。鳥山先生とは術前の写真と現状を比較しながら、治療の効果についてお話しさせていただいており、その中で効果を実感し始めています。一方で、手術の影響なのか、肌の知覚が以前とは違っています。

     

    また光線療法の反応によって肌が若干ボコボコしている感じもあります。時間が経つにつれて少しずつ皮膚が定着しましたが、自分で目元の皮膚に触れるとかつての自分の皮膚よりも若干厚みがある手触りです。

     

    現在は、飲み薬を3種類、塗り薬を2種類、更に光線療法を受けています。治療費としてはレーザー治療の料金に加え、各種薬代がかかっています。サプリメントやアレルギー薬も随時摂取・服用しています。

  • この治療を受けてEさんの生活や気持ちは変化しましたか。具体的にお聞かせください。

    Eさん:とにかく鳥山先生とお会いできてよかったです。紹介してくださった地元の皮膚科の先生にとても感謝しています。更に、東京で通院しているクリニックの光線療法の効果が高くモチベーションが上がりました。

     

    ただし、仕事をしながら毎週の通院というのは身体的な負担も大きく、かつ継続して受診するのには意志の強さが求められているなと通院しながら痛感しています。

  • 皮膚の再生医療を受けてみて感じたことや、こんなところがもっとよくなるとよいなというお考えがあれば教えてください。

    Eさん:術後1ヶ月もの間ガーゼを顔に貼りつけたままにするのがつらかったです。特に術後1ヶ月間は慎重に患部を保護しておく必要があり、私のように一人暮らしですと、家族の介助がないため洗髪などの日常生活が大変でした。また、他人の眼も気になりますので、目立ちにくいガーゼにしてもらえたら有難いですね。白斑や手術について第三者に説明しなくてはならないという状況もストレスだったりします。

     

    実際、この治療を受けてみて感じたのは、培養表皮がとてもデリケートだということです。移植後にこんなに気を遣わなくてはいけないのかと。縫ってもらったらそれで大丈夫だと手術前は思っていました。培養表皮が移植後により早く定着してくれれば、ガーゼを早く取り外せるのではと思います。ガーゼで肌が呼吸できない状態が長かったので、一刻も早く取り外したかったです。傷跡のかさぶたをとっていいのかどうかも悩みました。

     

    また、私がこの治療を受けた時は、まだ保険診療ではなく、知見も限られていましたのでわからないことが多く不安でした。保険診療が可能になったことで、今後は治療を受ける人が増えていき、経験値も溜まっていくのではないでしょうか。

     

  • これから、この治療を受けようと考えている難治性白斑の患者さんにアドバイスはありますでしょうか。

     

    Eさん:私は元々接客業に従事していましたが、コロナ禍で業務内容に大きな変更があったことが影響して治療に踏み切ることが出来ました。それは会社の理解があったからこそです。移植部位の大きさにもよりますが、おおがかりな手術になる可能性もありますので、治療に取り組めるかや、ある程度のまとまった期間で休めるかなど、ご自身の環境にもよると思います。

     

    手術については担当の先生から詳しい話を聞くことが出来ます。手術以外の負担もありますので、ある程度日常の不便さも覚悟した上で、それでも手術を受けたいかをしっかり考えてから決断されることをお勧めします。私は10年以上、様々なことを我慢してきました。旅行も気軽にはいけませんでしたし、日焼けにも細心の注意を払って過ごしています。薬や光線治療など他の手段を試しても効果がなかったのであれば、培養表皮移植を試してみる価値はあると思います。もちろん白斑の程度にもよるとは思います。

     

    小さな白斑の人は無理して手術を受ける必要はないかもしれませんが、広範囲の白斑であれば是非一度、検討されてみてはいかがでしょうか。時間と労力をかけてでもしっかりと治して、心の健康も取り戻したいという人にはこの選択肢を視野にいれていただければと思います。私自身は、この治療で一定の効果を感じています。

     

    まずは、情報収集をしっかりとされることが大事だと思います。自分の症状を知り、手術を受けるのか、術後の管理もしっかりできるかなど思いを巡らせるべきポイントがいくつもあります。

     

    ただし、手術が怖いから、リスクがあるからやらないと即決してしまうのはもったいない気がします。私は一人暮らしなので術後の生活で苦労しましたが、周りのサポートが得られる環境の場合は、手術後しばらくは手助けが欲しいことを予め伝えるというのも大事なポイントだと思います。

  • 最後に、Eさんと同じように難治性白斑で治療法がなくて悩んでいらっしゃる方々にひとことメッセージをお願いいたします。

    Eさん:白斑は他人にうつる病気ではありません。治療をするかしないかの最終判断は自分自身に委ねられています。私の体験談をひとつの参考にしていただきながら、ご自身の症状と今感じているデメリットを踏まえて、残りの人生どうしたいかを時間をとって熟考していただきたいです。その折に、参考の一つとして、このような選択肢もあるということ知っていただきたいです。

     

    私は、化粧品の使用がきっかけで尋常性白斑になりました。白斑はコロナのような感染症と比較するとどうしても、研究や新薬の開発の進捗が緩やかであると感じますが、能動的な情報収集や、(治療を受けるのであれば)強い意志を持って日々のケアを継続することが重要だと感じています。

  • 本日は貴重なお話をありがとうございました。(取材撮影:2025年12月13日)

名古屋市立大学 医薬学総合研究院 大学院医学研究科・医学部 形成外科学 教授

鳥山 和宏 先生

Toriyama Kazuhiro

<所属学会など>

日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会・

日本形成外科手術手技学会・日本白斑学会・日本再生医療学会・日本褥瘡学会・日本熱傷学会など

 

名古屋市立大学 形成外科教授・形成外科部長

名古屋市立大学 乳がん治療・乳房再建センター 副センター長

鳥山先生より

このインタビュー記事を拝読して、私自身もいくつかの大切なことを改めて教えていただきました。一つは、移植手術が大変であったということです。痛みと恐怖の中で、患者さんご本人が治療に向き合われていたこと、また当時は臨床研究の段階であり、全身麻酔で移植手術を行うことが難しかったことも、大きな負担となっていました。もう一つは、術後のケアの煩雑さと、そのご負担の大きさです。

現在では、この治療は保険適用となっており(ただし12歳以上の方が対象です)、全身麻酔という選択も可能となっています。また、術後のケアについても、ガーゼによる固定期間を約2週間までとするなど、治療効果を損なわないように配慮しながら、患者さんの負担をできるだけ軽減できるよう検討と工夫を重ねています。

この治療は、塗り薬や光線療法では改善が難しい方に対する、新たな治療の選択肢の一つです。私たちは、患者さんが笑顔と自信を取り戻せることを願いながら診療を行っています。ただし、この手術は決して簡単な治療ではありません。十分にご理解・ご納得いただいたうえで、形成外科医や皮膚科医とよく相談しながら選択していただくことが大切です。ご不安やご不明な点がございましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。私たちは、患者さんの大切な選択に寄り添い、全力で支えてまいります。