自家培養軟骨移植術 再生医療ナビ

ヒザを壊したプロサッカー選手、再生医療で復活を期す。近藤岳登(FC大阪)プロサッカー選手として、初の「自家培養軟骨移植術」を受ける。

突如襲ったヒザの損傷

FC大阪 練習グランド。 近藤は、いつものように、 カラダをほぐすための軽いダッシュをしていた。 1本目、2本目。右ヒザが小さく鳴った。 あれ?と思ったとたんヒザがロックする。 まったく動かない。 そして猛烈な激痛がやってきた。 「半月板損傷」
それはスポーツ選手に多くみられる怪我であり、 ヒザを捻った場合によく起こる。 近藤はすぐさま病院に担ぎ込まれ、 主治医である、神戸大学医学部整形外科の 黒田良祐の手により手術がおこなわれた。 右ヒザに初めて内視鏡が入れられる。

その時、黒田は目をうたがった。 すり減った軟骨、大きく損傷した軟骨がそこにあった。 「かなり驚いたよ。よくこんな状態でいままでプレーしていたね」 しかし、この時は最適な治療法がなく、半月板のみ治療した。
後日、黒田からヒザの症状を聞いた近藤は愕然とする。 「もう、サッカーができないかも」 「走ったり歩いたりすることも、支障がでるかもしれない」 近藤はそれまで怪我らしい怪我をしたことがなかった。 ヒザの痛みも特に感じたことがなかった。 「そんなに重傷なのか、オレのヒザは」 絶望感どころか、信じられないという気持ちが先にあり、 どうしていいかまったく分からなくなった。

新しい治療法の提案

ヴィッセル神戸時代から面倒をみてもらっている 主治医の黒田を近藤は心から信頼している。 その黒田から新しい治療法の提案をうけた。

「自家培養軟骨移植術」という再生医療。 再生医療?何のことだ。ノーベル賞のあれか? そんなすごいことをやるのか。 近藤の脳裏にさまざまな思いが広がる。 もちろん、治せるならその手術を受けたい。 しかし、回復まで時間がどれくらいかかるのか。 チームは受け入れてくれるのか。 そして本当にピッチに復帰できるのか。

近藤の病状はサッカーによる「外傷性軟骨欠損症」。右ヒザ内側顆(ないそくか) 7.2cm2の欠損。かなり重傷であった。ヒザ軟骨は、傷つくと治りにくいといわれる。筋肉のように張り巡らされた血管がなく、自然治癒力が極めて低いからだ。酷使すればすり減り、元にもどりにくい。年齢を重ねるとヒザが悪くなる人が多くなるのもこうした理由からだ。

自家培養軟骨移植術

「プロアスリートのヒザ軟骨は、ほとんどの人がすり減っているはず」「そして自覚症状のない人も多い」今まで多数の患者を診てきた黒田は語る。そして軟骨が悪くなってしまったアスリートの殆どが引退していくという。そのための決定的な治療法がなかったからだ。

しかし、ようやく希望が見えて来た。「自家培養軟骨移植術」という再生医療。自分の軟骨細胞を培養し、軟骨欠損部分に移植するという最新の治療だ。この治療はプロアスリートを救う、新しい医療として注目されはじめている。

《ご注意》
●「自家培養軟骨移植術」対象者は、ヒザ関節における「外傷性軟骨欠損症」「離断性骨軟骨炎」(変形性膝関節症を除く)の患者さまになります。また個人により適合しない場合があります。詳しくは医療機関(自家培養軟骨認定施設)にご相談ください。
●「自家培養軟骨移植術」は個人により治療の差があります。また個人によりリハビリ期間の差があります。

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PROFILE

近藤 岳登 Gakuto Kondo
1981.2.10生まれ(35歳)
愛知県豊川市出身
1999
愛知産業大学三河高校卒業後、大阪体育大学にサッカー入学、1カ月後退学。
サーフショップ勤務
2001~2002
東海理化SC(社会人チーム)
2003~2006
びわこ成蹊スポーツ大学入学、関西学生選抜に2年連続選出。
2007~2012
ヴィッセル神戸
2013~
水戸ホーリーホック
2014~現在
現在 FC大阪
黒田 良祐 Ryosuke Kuroda
神戸大学医学部整形外科 准教授
●日本整形外科学会専門医
●日本整形外科学会認定スポーツ医
●日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医

自家培養軟骨移植術の副作用・ご注意

現在、保険適用となっている本移植術の対象患者は、「外傷性軟骨欠損症」および「離断性骨軟骨炎」(変形性膝関節症を除く)で、かつ軟骨の欠損の大きさが4㎝2以上と限られています。
本移植術で用いられる自家培養軟骨には動物由来の原料(ウシ真皮由来アテロコラーゲン、ウシ血清およびブタ膵臓由来トリプシン)が使用されており、この原料に由来する感染症の危険性は完全には否定できません。
また、同じく製造過程で使用される抗生物質(ゲンタマイシン、アムホテリシンB)、コラゲナーゼ(微生物由来)といった成分によりアナフィラキシー反応などの過敏症状が起こるおそれもあります。移植後は担当医師が注意深く観察し、必要に応じて適切な処置をおこないます。
あらかじめ、これらの原料にアレルギー反応があることが判明している患者さま、および関節リウマチ、乾癬関節炎、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発性筋炎、自己免疫性甲状腺疾患、多発性動脈炎、強皮症、潰瘍性大腸炎、クローン病、シェーグレン症候群、ライター症候群、混合結合組織病などの自己免疫疾患をもつ、あるいは既往歴のある患者さまには使用できません。