自家培養軟骨移植術について
「自家培養軟骨移植術」は、2013年4月から公的医療保険適用になっています。治療および保険の対象患者さんは以下のとおりになります。
1「外傷性軟骨欠損症(がいしょうせいなんこつけっそんしょう)」で、
「損傷の大きさが合計4㎠以上」の患者さん
「外傷性軟骨欠損症」はスポーツでの接触や交通事故など外からの強い衝撃で、ひざ軟骨の一部が欠けてしまう(剝がれてしまう)症状です。
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例えば、「サッカーの試合中に相手と激しくぶつかった」「交通事故でひざを強く打った」など、外からの強い衝撃が原因でひざの軟骨が欠けてしまう(剥れてしまう)症状です。過去にひざを痛めた結果、ひざ軟骨が欠けてしまう方もいます。「外傷性軟骨欠損症」の患者さんは、外からの強い衝撃により、軟骨だけではなく、靱帯や半月板などを損傷していることがあります。その場合、複数の治療を必要とすることもあります。
外傷性軟骨欠損症の対処・治療法
非荷重部(体重が掛からない場所)の軟骨欠損で、症状が軽い場合には、局所の安静、装具療法、ヒアルロン酸の関節内注射などの「保存療法」があります。
荷重部(体重が掛かる場所)の小さな軟骨欠損には、骨に穴を開け、血液を出して軟骨形成を促す「骨穿孔術(こつせんこうじゅつ)」という治療法があります。「骨穿孔術」は、軟骨欠損下にある骨にキリのような器具で穴を開け、骨髄から血液(骨髄液)を出して軟骨組織の形成を促す治療法です。
また、患者さんご自身のひざから傷んでいない軟骨と骨を円柱状にくりぬいて、軟骨欠損部に移植する「自家骨軟骨柱移植術(じかこつなんこつちゅういしょくじゅつ)/別名:モザイクプラスティ術」という治療法もあります。
しかし、大きな面積の軟骨欠損はこれらの治療法では治すことが困難でした。現在は、再生医療「自家培養軟骨移植術」によって大きな面積の欠損にも治療をおこなうことが可能です。
2「離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)」で、
「損傷の大きさが合計4㎠以上」の患者さん
激しいスポーツや労働などで、ひざに繰り返し力が加わることで、軟骨が軟骨の下にある骨とともに剝がれてしまう症状です。スポーツ選手や若い人に多く見られます。
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「離断性骨軟骨炎」は、スポーツや労働などの継続的なストレスが骨に加わることで発症するといわれています。軟骨下にある骨に継続的にストレスが加わることで、骨が傷んで軟骨とともに剝がれ関節内に遊離します。発症初期段階では、自覚症状がない場合もありますが、遊離した骨軟骨片がひざ関節の隙間に入ると、ひざが動かせなくなったり(ロッキング)、強い痛みや腫れが出たりします。成長期の小中学生に症状が多く現れるといわれています。
離断性骨軟骨炎の対処・治療法
症状が軽く安定している場合には、局所の安静、装具療法、ヒアルロン酸の関節内注射などの「保存療法」で様子を見ます。
軟骨の下の骨の治癒が遅れていたり、発育期以降であれば、「骨穿孔術(こつせんこうじゅつ)」という、欠けた軟骨の下骨にキリのような器具で穴を開け、中の骨髄から血液(骨髄液)を軟骨が欠けた箇所に流入させることで、軟骨に変わる組織の形成を促す治療法があります。
また、遊離骨軟骨片(遊離した骨軟骨片)と母床(軟骨の土台の骨)の軟骨欠損が小さい場合には、遊離骨軟骨片の摘出のみおこなう場合や、遊離した骨軟骨片を骨釘(骨を形成して作った釘)や生体吸収性ピン(体内で分解・吸収されるピン)で欠損部に固定する場合もあります。
遊離骨軟骨片の状態が悪い場合には、「自家骨軟骨柱移植術(じかこつなんこつちゅういしょくじゅつ)/別名:モザイクプラスティ術」があります。
軟骨欠損の大きさが4㎠以上の広範囲になると、「自家培養軟骨移植術」の治療が可能になります。