自家培養軟骨移植術FAQ 自家培養軟骨移植術FAQ

※こちらに記載される「自家培養軟骨(移植術)」は、公的医療保険が適用されるものを示します。

こちらもぜひご覧ください
治療スケジュール

リハビリテーション

質問をクリックすると、回答が表示されます。

適応について

Q自家培養軟骨移植術は、どのような患者が適応対象ですか?

Aひざ関節における外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の患者さまです。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に使用する場合に限ります。

Q股関節、足首、肘など、ひざ以外の治療に自家培養軟骨を使えますか?

A自家培養軟骨移植術は、厚生労働省により適応対象が定められているため、適応対象外の部位(ひざ以外)の治療に使うことはできません。

Q半月板を損傷していますが、半月板に対して自家培養軟骨で治療できますか?

A半月板の治療に自家培養軟骨を使用することはできません。

Q軟骨がすり減ってしまい、変形性膝関節症と診断されていますが、自家培養軟骨移植術は受けられますか?

A変形性膝関節症と診断されている患者さまは対象外と定められていますので、自家培養軟骨による治療は受けられません。患者さまに最適な治療法は医師が判断しますので、まずは専門の医療機関へご相談ください。

Q人工関節を勧められていますが、自家培養軟骨での治療は可能ですか?

A人工関節を勧められる患者さまは重度の変形性膝関節症であるケースが多く、軟骨がほとんどなく骨まで変形してしまっているような重度の患者さまの場合、自家培養軟骨での治療は難しいとされています。
患者さまの状況に応じて、医師が最適な治療法を判断しますので、まずは専門の医療機関へご相談ください。

Q人工関節と自家培養軟骨がどう違うのか教えてください。

A人工関節は金属やセラミックなどでできており、患者さまの悪くなったひざ関節全体もしくはその一部を取り除き、人工物に置き換えるものです。一方、自家培養軟骨は患者さまご本人の細胞とアテロコラーゲンからつくった培養軟骨を、欠損した部分に移植するもので、置き換えるものではありません。
最近は技術も進歩してきましたが、人工関節の耐用年数は15~20年程度といわれており、交換(再手術)は1回までといわれています。重度の患者さまにとって痛みを取る有効な治療法である一方で、若年の患者さまにはあまり積極的に使わない傾向があります。
自家培養軟骨は、年齢制限はなく若年の患者さまにも使用できますが、高齢者に多い変形性膝関節症である場合は適応外となります。

Qひざ(半月板や靱帯など)をケガしたことがあるが、再生医療で治療できますか?

A半月板やひざの靱帯に対する再生医療はまだ研究開発の段階にありますが、軟骨は治療が可能です。過去にスポーツや事故などで半月板や靱帯などを痛めた方は、同時に軟骨も痛んでいる可能性があり、ひざ軟骨については再生医療で治療できる可能性があります。

Q普段、重労働をしていますが、最近、ひざが痛くて思うように仕事ができません。再生医療で治せますか?

Aひざに負担がかかるお仕事をされている方は軟骨が痛んでいる可能性があります。再生医療で治療できる可能性があります。詳しくは、早期に医療機関で受診し、専門医にご相談されることをおすすめします。

Qひざまわりを押すと痛い箇所がありますが、軟骨が欠けているのでしょうか?

Aひざの内側や外側、ひざのお皿のあたりを押すと痛い方は軟骨が痛んでいる可能性があります。詳しくは、早期に医療機関で受診し、専門医にご相談されることをおすすめします。

Q再生医療でひざを治してスポーツ復帰したいのですが可能でしょうか?

A自家培養軟骨移植術は、自己修復できない軟骨を保険で治療することができる方法として一般の方はもちろん、スポーツ選手にもおこなわれています。一般的に、スポーツ復帰には1年程度かかります。その期間はスポーツの種類によっても異なり、激しいスポーツへの復帰は1年から1年半程度かかります。ただし、じっくりしっかり治すことで、より長くスポーツを楽しめる可能性があります。

手術について

Q自家培養軟骨移植術の流れを教えてください。

A主な治療の流れは次のとおりです。
1.アレルギー検査
2.患者さまのひざ(荷重のかからない部分)から正常な軟骨を少量採取(関節鏡手術)
→約4週間かけて培養
3.移植手術(1か月程度入院)
4.半年から1年程度リハビリテーションを実施

→ 詳しくはこちら(治療スケジュール)

Q自家培養軟骨移植術に入院は必要ですか?またどのくらいの期間ですか?

A軟骨組織を採取するときは関節鏡という内視鏡を使い1日程度入院します。移植手術とその後の入院期間はリハビリテーションにもよりますが、1か月前後が一般的です。

Q長期間の入院ができないのですが、この治療を受けることはできるのでしょうか?

A自家培養軟骨移植術は通常、手術後4週間程度、治療した足に全体重をかけることができません。退院のタイミングは、患者さまのひざの治療状況や生活環境によって異なりますので、主治医とご相談ください。

Q手術にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?

A軟骨組織を採取する手術は関節鏡でおこないます。軟骨組織の採取のみの場合は30-40分程度ですが、その他の処置も同時におこなう場合は数時間を要する場合もあります。移植手術は患部を切開しますので、2時間程度かかりますが、その他の処置が併用される場合は3~5時間程度かかります。

Qこの治療を受けた場合、最短でどれくらいで社会復帰できるのでしょうか。

A患者さまのひざの状態や社会復帰された後の活動性にもよりますが、デスクワークなどのひざに負担のかからないお仕事であれば2カ月ほどで復帰できると考えられます。

Q治療が完了した後も定期的な検診は必要ですか?

A新しい治療法の場合、国の定めにより、市販後の調査が義務づけられています。2023年5月現在で保険診療が認められている自家培養軟骨移植術については、2022年6月に調査の審査が終了しました(詳しくはこちら)。そのため、調査のための術後の定期的な検診はありません。ただし、他の手術と同様に、主治医による術後のチェックはありますので来院が必要です。

Qこの手術は、技術的に難しいものなのでしょうか?

A自家培養軟骨移植術の難易度は、既存の治療を上回るものではありません。しかし、移植した軟骨を覆うためにコラーゲン膜を軟骨に縫い合わせるという細かく慎重な処置があります。また、患者さまのひざの状態によって他の処置(半月板治療や靱帯再建など)を同時におこなう場合は、手術に時間がかかる場合があります。

Qリハビリテーションはどれくらいの頻度でおこなうのでしょうか。

A自家培養軟骨は移植直後から6週間程度は、軟骨細胞が増える時期です。この期間は移植した部分が軟らかいため全体重をかけることはできません。しかし、ひざが固まらないように、細胞が増えるようにひざの曲げ伸ばしをおこない、少しずつ体重をかけていきます。6週以降は徐々に移植した軟骨の固さが増していきます。リハビリ内容、スポーツや負荷のかかる活動の開始時期などは医師が診断の上、許可します。

Q自家培養軟骨移植術にかかる費用はいくらくらいですか?

A本治療は、高額療養費制度の対象となります。患者さま個人の自己負担額は、所得にもよりますが、月額6~25万円程度(2018年6月現在)とされています。
自家培養軟骨の価格は税込212万9千円(2018年6月現在)で、その他ベッド使用料などの入院費と手術費用(医師の手技料)等がかかります。病院にもよりますが、治療に伴う費用は300万円程度かかるとされていますが、患者さま個人の自己負担額は前述の通りです。高額療養費制度の詳細については、下記厚生労働省のホームページをご覧ください。

→ 高額療養費制度を受けられる患者さまへ

Qこの治療を受けた後に、同じ足にもう一度この治療を受けることはできるのでしょうか。

A受けられます。反対側の足も受けることができます。

Q変形性膝関節症ですが、公的医療保険適用外(自費)でなら自家培養軟骨移植術を受けることはできるのですか?

A自家培養軟骨が使える患者さまは、厚生労働省より定められているため、自費でも変形性膝関節症の治療に自家培養軟骨を使用することはできません。

Q自家培養軟骨による治療はどこで受けられますか?

A自家培養軟骨は、厚生労働省より公的医療保険適用に関する留意事項が定められています。
定められた基準を満たし、研修の修了している医師がおり、準備が整った医療機関でのみ、治療がおこなわれます。
自家培養軟骨による治療を実施する準備が整っている医療機関の最新情報は、こちらをご覧ください。

→ 自家培養軟骨移植術が受けられる病院

→ 自家培養軟骨移植術のドクターインタビューはこちら

Q海外の友人がこの治療を自費でよいから受けたいといっています。可能でしょうか。

A自家培養軟骨の使用認定施設であって、海外からの患者さまを受け入れることができる医療機関であれば可能です。

実績について

Q自家培養軟骨移植術の臨床成績を教えてください。

A詳しくは下記論文をご参照ください。自家培養軟骨移植術の治験データでは、約9割の患者さまにおいて症状が緩和し「有用である」との結果が得られました。

参考資料:
1)Tohyama H, Yasuda K, Minami A et al:Atelocollagen-associated autologous chondrocyte implantation for the repair of chondral defects of the knee : a prospective multicenter clinical trial in Japan.J Orthop Sci 14:579-588(2009)
2)Takazawa K, Adachi N, Deie M et al:Evaluation of magnetic resonance imaging and clinical outcome after tissue-engineered cartilage implantation.-Prospective 6-year follow-up study-.J Orthop Sci 14:413-424(2012)

Q具体的にはどのような手術ですか?注射のようなものですか?

Aヒアルロン酸を注射するような関節注射の治療とは異なり、自家培養軟骨の移植は外科手術を伴います。ひざを切開し、軟骨の欠損部へ培養した軟骨を移植し、コラーゲン膜でふたをします。手術には入院が必要となり、術後も半年から1年単位でのリハビリテーションが必要です。

Q手術を受けた方の術後の経過を教えてください。

A実際にこの移植術を受けた方々のインタビューをご覧ください。

→ ドクター・患者さんインタビューはこちら

Q自家培養軟骨移植術の長期の結果はよいのでしょうか?

A日本国内でおこなわれた治験(販売前の臨床試験)の6年の追跡調査では、評価された全ての症例で懸念するような症状はみられず、移植前と比較して膝スコア(痛みや機能の評価)とMRI所見ともに改善し維持されていました(J Orthop Sci 14:413-424(2012))。北海道大学病院で治療された13名の患者さんの移植後3~7年の中期成績でも膝の臨床症状が改善されたことが確認されました(Journal of Orthopaedic Science (2023))。

Q自家培養軟骨移植術はこれまでの治療法(骨穿孔術、自家骨軟骨柱移植術)と比べて何が違うのですか?

A大きな違いは、これまでの治療法では治療できなかった大きな軟骨欠損を治すことができる点です。骨穿孔術は軟骨が欠けた箇所に穴をあけて骨髄からの細胞を呼び込んで、速やかに軟骨を治しますが、数年たつと再び痛みが現れる場合があります。自家骨軟骨柱移植術は患者さまご自身のひざの痛んでいない箇所から骨と軟骨を円柱状にくりぬいて、痛んでいる箇所に移植する方法ですので治療効果は高いですが、採取できる面積に限りがあるため大きな欠損は対応できません。自家培養軟骨移植術は、採取した軟骨を培養して増やすため、自家骨軟骨柱移植術より採取する面積が少なくて済み、大きな欠損にも対応できますが、2回手術をしなくてはならないというデメリットもあります。

→ 詳しくはこちら(主な治療法)

Q自家培養軟骨は移植後、どれくらい長持ちするのでしょうか。

A自家培養軟骨移植術は、2013年4月から保険診療が可能となって以降、全ての症例で追跡調査がおこなわれました。2022年にその結果が国によって審査され、安全性と有効性に関する懸念がなかったことから、承認時の条件を変えることなく引き続き治療が行われています。

ひざについて

Qひざ軟骨が悪いかどうか、自分でチェックすることはできますか?

Aひざ軟骨が損傷していても症状が出ないケースもあり、ご自身ではチェックが難しいのが現状です。少しでもひざに違和感を覚えたり、過去にひざをケガされた経験がある方は専門医を受診されることをおすすめします。

→ スポーツ・ヒザ セルフチェックはこちら

Qジョギング後にひざが時々痛みます。いちど病院で診察してもらおうと思いますが、スポーツ専門の病院が良いのでしょうか?

A整形外科あるいは専門性の高いスポーツ整形外科の受診をおすすめします。

Q以前に靭帯を切ったことがあります。ひざ軟骨に影響しますか?

A靱帯はひざ関節を支える重要な役割を果たしています。靱帯が切れるとひざ関節のバランスが崩れ、ひざ軟骨や半月板が損傷することがあります。

Q数年前のケガが今になって影響してくることなどあるのでしょうか?

A過去のケガが原因でひざの違和感が出てくることはあります。ケガをした当初は問題がなくても、時間が経つにつれて徐々にひざの軟骨や半月板などが痛んでくる場合があります。

Qひざ軟骨の損傷は本当に自然に治らないのですか?

A軟骨には自然治癒するために必要な物質を運ぶ血管が非常に少なく、ほぼ自然治癒はしないといわれています。

Qひざ軟骨の損傷は放っておくとどうなりますか?

A損傷した軟骨の反対側にある軟骨とこすれてさらにすり減り、若年で変形性膝関節症を発症する場合があります。40~50歳で変形性膝関節症と診断されるケースも多く確認されています。

Qひざ軟骨の新しい治療方法をニュースなどで聞きます。いつ頃できるようになりますか?

A日々報道されているように、さまざまな新しい治療法が研究されています。新しい治療方法の研究が始まり一般に普及するまでには、患者さまの安全を確保するために数年~数十年におよぶ検証が必要です。既にひざに違和感を抱えている場合は、新しい治療法を待っている間に症状が悪化し、治療法の選択肢が減る可能性があります。早期に医療機関で受診されることをおすすめします。

Qグルコサミン・サプリメントでひざ軟骨は治りますか?

Aグルコサミンは軟骨を構成するプロテオグリカンという成分の原料で、摂取すると軟骨のすり減りや損傷を補修したり、軟骨を強化したりすると考えられているサプリメントです。しかし、残念ながら、海外でおこなわれた臨床試験では、ひざ軟骨損傷への治療効果はないと報告されています。グルコサミンは年齢とともに体内で作られる量が減少していきますので、それを補給する手段としては有効とされています。これらのサプリメントを活用することは有用ですが、効果がみられず痛みが持続する場合には専門医を受診されることをおすすめします。

Qヒアルロン酸注射でひざ痛が治ると聞いたのですが?

Aヒアルロン酸は関節の内部を満たしている関節液の主成分です。変形性膝関節症になると、関節内部のヒアルロン酸の濃度が減り、潤滑性やクッション性が低下してしまいます。ひざに正常の関節液に近いヒアルロン酸を注射して補うと、関節液の粘り気や弾力性が一時的に改善しひざの痛みがやわらぎますが、軟骨の損傷が修復される訳ではありません。

Qひざの健康で気をつけることがあれば教えてください。

Aひざ関節は人体で最もおおきな関節で、半月板、筋肉、靱帯といういくつもの組織で体重を支えています。走ったり、階段を昇降したりすると負荷はさらに増えます。つまり、ひざ関節を健康に保つためには、ひざを支える筋肉や靱帯を鍛える必要があるのです。
ナンコツコツコツ体操でひざを鍛えましょう。

→ ナンコツコツコツ体操はこちら

再生医療について

Q再生医療は新しい治療ですが、安全なのでしょうか?

A日本で保険診療で受けられる再生医療は「自家培養表皮(重症熱傷、先天性巨大色素性母斑、表皮水疱症)」「自家培養軟骨(ひざ関節軟骨欠損)」「自家培養角膜上皮(角膜上皮幹細胞疲弊症)」「自家培養口腔粘膜上皮(角膜上皮幹細胞疲弊症)」などの細胞シートやCAR-Tというガン治療に用いられるもの、更に遺伝子治療があります。全ての再生医療等製品は市販後の全例調査が義務づけられ、国によって審査されています。

→ 詳しくはこちら https://saiseiiryo.jp/approval/

こちらもぜひご覧ください

  • 治療スケジュール
  • リハビリテーション