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Q自家培養軟骨移植術は、どのような患者が適応対象ですか?
Aひざ関節における外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の患者さまです。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に使用する場合に限ります。
Q軟骨がすり減ってしまい、変形性膝関節症と診断されていますが、自家培養軟骨移植術は受けられますか?
A変形性膝関節症と診断されている患者さまは対象外と定められていますので、自家培養軟骨による治療は受けられません。患者さまに最適な治療法は医師が判断しますので、まずは専門の医療機関へご相談ください。
Q人工関節を勧められていますが、自家培養軟骨での治療は可能ですか?
A人工関節を勧められる患者さまは重度の変形性膝関節症であるケースが多く、軟骨がほとんどなく骨まで変形してしまっているような重度の患者さまの場合、自家培養軟骨での治療は難しいとされています。
患者さまの状況に応じて、医師が最適な治療法を判断しますので、まずは専門の医療機関へご相談ください。
Q人工関節と自家培養軟骨がどう違うのか教えてください。
A人工関節は金属やセラミックなどでできており、患者さまの悪くなったひざ関節全体もしくはその一部を取り除き、人工物に置き換えるものです。一方、自家培養軟骨は患者さまご本人の細胞とアテロコラーゲンからつくった培養軟骨を、欠損した部分に移植するもので、置き換えるものではありません。
最近は技術も進歩してきましたが、人工関節の耐用年数は15~20年程度といわれており、交換(再手術)は1回までといわれています。重度の患者さまにとって痛みを取る有効な治療法である一方で、若年の患者さまにはあまり積極的に使わない傾向があります。
自家培養軟骨は、年齢制限はなく若年の患者さまにも使用できますが、高齢者に多い変形性膝関節症である場合は適応外となります。
Qひざ(半月板や靱帯など)をケガしたことがあるが、再生医療で治療できますか?
A半月板やひざの靱帯に対する再生医療はまだ研究開発の段階にありますが、軟骨は治療が可能です。過去にスポーツや事故などで半月板や靱帯などを痛めた方は、同時に軟骨も痛んでいる可能性があり、ひざ軟骨については再生医療で治療できる可能性があります。
Q普段、重労働をしていますが、最近、ひざが痛くて思うように仕事ができません。再生医療で治せますか?
Aひざに負担がかかるお仕事をされている方は軟骨が痛んでいる可能性があります。再生医療で治療できる可能性があります。詳しくは、早期に医療機関で受診し、専門医にご相談されることをおすすめします。
Q自家培養軟骨移植術の流れを教えてください。
A主な治療の流れは次のとおりです。
1.アレルギー検査
2.患者さまのひざ(荷重のかからない部分)から正常な軟骨を少量採取(関節鏡手術)
→約4週間かけて培養
3.移植手術(1か月程度入院)
4.半年から1年程度リハビリテーションを実施
Q自家培養軟骨移植術に入院は必要ですか?またどのくらいの期間ですか?
A軟骨組織を採取するときは関節鏡という内視鏡を使い1日程度入院します。移植手術とその後の入院期間はリハビリテーションにもよりますが、1か月前後が一般的です。
Q長期間の入院ができないのですが、この治療を受けることはできるのでしょうか?
A自家培養軟骨移植術は通常、手術後4週間程度、治療した足に全体重をかけることができません。退院のタイミングは、患者さまのひざの治療状況や生活環境によって異なりますので、主治医とご相談ください。
Q手術にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
A軟骨組織を採取する手術は関節鏡でおこないます。軟骨組織の採取のみの場合は30-40分程度ですが、その他の処置も同時におこなう場合は数時間を要する場合もあります。移植手術は患部を切開しますので、2時間程度かかりますが、その他の処置が併用される場合は3~5時間程度かかります。
Qこの治療を受けた場合、最短でどれくらいで社会復帰できるのでしょうか。
A患者さまのひざの状態や社会復帰された後の活動性にもよりますが、デスクワークなどのひざに負担のかからないお仕事であれば2カ月ほどで復帰できると考えられます。
Q治療が完了した後も定期的な検診は必要ですか?
A新しい治療法の場合、国の定めにより、市販後の調査が義務づけられています。2023年5月現在で保険診療が認められている自家培養軟骨移植術については、2022年6月に調査の審査が終了しました(詳しくはこちら)。そのため、調査のための術後の定期的な検診はありません。ただし、他の手術と同様に、主治医による術後のチェックはありますので来院が必要です。
Qこの手術は、技術的に難しいものなのでしょうか?
A自家培養軟骨移植術の難易度は、既存の治療を上回るものではありません。しかし、移植した軟骨を覆うためにコラーゲン膜を軟骨に縫い合わせるという細かく慎重な処置があります。また、患者さまのひざの状態によって他の処置(半月板治療や靱帯再建など)を同時におこなう場合は、手術に時間がかかる場合があります。
Qリハビリテーションはどれくらいの頻度でおこなうのでしょうか。
A自家培養軟骨は移植直後から6週間程度は、軟骨細胞が増える時期です。この期間は移植した部分が軟らかいため全体重をかけることはできません。しかし、ひざが固まらないように、細胞が増えるようにひざの曲げ伸ばしをおこない、少しずつ体重をかけていきます。6週以降は徐々に移植した軟骨の固さが増していきます。リハビリ内容、スポーツや負荷のかかる活動の開始時期などは医師が診断の上、許可します。
Q自家培養軟骨移植術にかかる費用はいくらくらいですか?
A本治療は、高額療養費制度の対象となります。患者さま個人の自己負担額は、所得にもよりますが、月額6~25万円程度(2018年6月現在)とされています。
自家培養軟骨の価格は税込212万9千円(2018年6月現在)で、その他ベッド使用料などの入院費と手術費用(医師の手技料)等がかかります。病院にもよりますが、治療に伴う費用は300万円程度かかるとされていますが、患者さま個人の自己負担額は前述の通りです。高額療養費制度の詳細については、下記厚生労働省のホームページをご覧ください。
Q変形性膝関節症ですが、公的医療保険適用外(自費)でなら自家培養軟骨移植術を受けることはできるのですか?
A自家培養軟骨が使える患者さまは、厚生労働省より定められているため、自費でも変形性膝関節症の治療に自家培養軟骨を使用することはできません。
Q自家培養軟骨移植術の臨床成績を教えてください。
A詳しくは下記論文をご参照ください。自家培養軟骨移植術の治験データでは、約9割の患者さまにおいて症状が緩和し「有用である」との結果が得られました。
参考資料:
1)Tohyama H, Yasuda K, Minami A et al:Atelocollagen-associated autologous chondrocyte implantation for the repair of chondral defects of the knee : a prospective multicenter clinical trial in Japan.J Orthop Sci 14:579-588(2009)
2)Takazawa K, Adachi N, Deie M et al:Evaluation of magnetic resonance imaging and clinical outcome after tissue-engineered cartilage implantation.-Prospective 6-year follow-up study-.J Orthop Sci 14:413-424(2012)
Q具体的にはどのような手術ですか?注射のようなものですか?
Aヒアルロン酸を注射するような関節注射の治療とは異なり、自家培養軟骨の移植は外科手術を伴います。ひざを切開し、軟骨の欠損部へ培養した軟骨を移植し、コラーゲン膜でふたをします。手術には入院が必要となり、術後も半年から1年単位でのリハビリテーションが必要です。
Q自家培養軟骨移植術の長期の結果はよいのでしょうか?
A日本国内でおこなわれた治験(販売前の臨床試験)の6年の追跡調査では、評価された全ての症例で懸念するような症状はみられず、移植前と比較して膝スコア(痛みや機能の評価)とMRI所見ともに改善し維持されていました(J Orthop Sci 14:413-424(2012))。北海道大学病院で治療された13名の患者さんの移植後3~7年の中期成績でも膝の臨床症状が改善されたことが確認されました(Journal of Orthopaedic Science (2023))。
Q自家培養軟骨移植術はこれまでの治療法(骨穿孔術、自家骨軟骨柱移植術)と比べて何が違うのですか?
A大きな違いは、これまでの治療法では治療できなかった大きな軟骨欠損を治すことができる点です。骨穿孔術は軟骨が欠けた箇所に穴をあけて骨髄からの細胞を呼び込んで、速やかに軟骨を治しますが、数年たつと再び痛みが現れる場合があります。自家骨軟骨柱移植術は患者さまご自身のひざの痛んでいない箇所から骨と軟骨を円柱状にくりぬいて、痛んでいる箇所に移植する方法ですので治療効果は高いですが、採取できる面積に限りがあるため大きな欠損は対応できません。自家培養軟骨移植術は、採取した軟骨を培養して増やすため、自家骨軟骨柱移植術より採取する面積が少なくて済み、大きな欠損にも対応できますが、2回手術をしなくてはならないというデメリットもあります。
Qひざ軟骨が悪いかどうか、自分でチェックすることはできますか?
Aひざ軟骨が損傷していても症状が出ないケースもあり、ご自身ではチェックが難しいのが現状です。少しでもひざに違和感を覚えたり、過去にひざをケガされた経験がある方は専門医を受診されることをおすすめします。
Q数年前のケガが今になって影響してくることなどあるのでしょうか?
A過去のケガが原因でひざの違和感が出てくることはあります。ケガをした当初は問題がなくても、時間が経つにつれて徐々にひざの軟骨や半月板などが痛んでくる場合があります。
Qひざ軟骨の損傷は放っておくとどうなりますか?
A損傷した軟骨の反対側にある軟骨とこすれてさらにすり減り、若年で変形性膝関節症を発症する場合があります。40~50歳で変形性膝関節症と診断されるケースも多く確認されています。
Qひざ軟骨の新しい治療方法をニュースなどで聞きます。いつ頃できるようになりますか?
A日々報道されているように、さまざまな新しい治療法が研究されています。新しい治療方法の研究が始まり一般に普及するまでには、患者さまの安全を確保するために数年~数十年におよぶ検証が必要です。既にひざに違和感を抱えている場合は、新しい治療法を待っている間に症状が悪化し、治療法の選択肢が減る可能性があります。早期に医療機関で受診されることをおすすめします。
Qグルコサミン・サプリメントでひざ軟骨は治りますか?
Aグルコサミンは軟骨を構成するプロテオグリカンという成分の原料で、摂取すると軟骨のすり減りや損傷を補修したり、軟骨を強化したりすると考えられているサプリメントです。しかし、残念ながら、海外でおこなわれた臨床試験では、ひざ軟骨損傷への治療効果はないと報告されています。グルコサミンは年齢とともに体内で作られる量が減少していきますので、それを補給する手段としては有効とされています。これらのサプリメントを活用することは有用ですが、効果がみられず痛みが持続する場合には専門医を受診されることをおすすめします。
Qヒアルロン酸注射でひざ痛が治ると聞いたのですが?
Aヒアルロン酸は関節の内部を満たしている関節液の主成分です。変形性膝関節症になると、関節内部のヒアルロン酸の濃度が減り、潤滑性やクッション性が低下してしまいます。ひざに正常の関節液に近いヒアルロン酸を注射して補うと、関節液の粘り気や弾力性が一時的に改善しひざの痛みがやわらぎますが、軟骨の損傷が修復される訳ではありません。