バレーボール選手から保育教諭に転身、その後の逆瀬川さんにお会いしました。

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バレーボール選手から保育教諭に転身
その後の逆瀬川さんにお会いしました。

保育教諭 逆瀬川 由衣さん × 社団福祉法人 正志会 清心緑が丘認定こども園 伊勢 雅子 園長

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ひざ軟骨欠損トラブルから「自家培養軟骨移植術」によって、日本で初めてプロ復帰を果たした逆瀬川由衣さん。その後2019 年8 月にバレーボールから保育の世界へ転身。その理由や現在のひざの具合をお聞きしました。
勤務先のこども園の伊勢園長も同席してくださいました。

前回のインタビューでお会いしたのが2018年7月、逆瀬川さんはヴィクトリーナ姫路の選手でした。今、清心緑が丘認定こども園の保育教諭として頑張っていらっしゃいます。よろしければ、この経緯を教えてください。
逆瀬川:はい。あのインタビューの後、手術したひざの方は問題なかったのですが、反対側のひざを痛めてしまったり、ふくらはぎの肉離れがあったり、小さなトラブルが何度か続きました。そのことが原因でトレーニングが思うようにできなくなり、プレーも思うような結果が出せない状態になってしまいました。
年齢的(当時27歳)にも選手として厳しい状況ということもあり、将来のことを考え始めました。違うチームで活動する選択肢もあったのですが、悩んだ末に2019年シーズンでヴィクトリーナ姫路を退団、バレーボールの道を終えることにしました。
バレーボール選手を終えた後には保育関係の仕事につきたいと以前から思っていたので、すぐに仕事を探し始めました。でも、私はそういう業界へのつながりが全くなくて、人に聞いたり、ハローワークに行ってみたりと手当たり次第に就職活動をしていて、その活動中に兵庫県が主催する就職フェアでこちらの園長先生にお会いしました。
園長先生、そのあたりのお話を聞かせてください。
園長:はい、この就職フェアでは新卒の方が多いので、ほとんどが紺色のリクルートスーツを着ています。その中で逆瀬川さんは白い服装で、背も高かったのですごく目立っていましたね。その日は、園についてお話させていただき、彼女の経歴などもある程度お聞きしました。
戻ってからWEB検索をしてみたら、たくさん情報が出てきて、「あ、有名人なんだ」と少しびっくりしました(笑)
WEBにひざのことも出ていましたから、後日、面接時にひざについても話し合いました。無理をせず、具合が悪ければフォローしていく気持ちがこちらにもありましたし、何より逆瀬川さんの情熱や前向きな態度が素晴らしかったので、採用させていただきました。
逆瀬川さんは、それまでバレーボールの選手で保育教諭は未経験でしたが、その辺りはいかがでしたか。
園長:学校で教員免許を取っていても働くのは初めてという方は意外と多くいらっしゃいます。中には40〜50代から始められる方もいます。女性が多い職場ですので、子育てが終わったお母さんが保育教諭として再スタートということもあります。もちろん経験はあるに越したことはないですが、一番はこの仕事が好きかどうかです。逆瀬川さんにはそれをとても感じました。私はあまりスポーツに詳しくないのですが、バレーボールが好きな先生や保護者の方は、逆瀬川さんに会えることを楽しみにしていたようです。
仕事の内容を具体的にお聞かせください。
逆瀬川:勤務時間は曜日によって早出や遅出があります。今は月曜日が遅出、火曜日は8時半から18時までの勤務です。お子さんの年齢に合わせて仕事内容は違いますが、いまは0歳から5歳までのお子さんを受け持っています。本を読んだり、一緒に運動したり、歌ったり、ご飯を食べさせたり、一日中ずっと子供たちと一緒です。お昼寝の時間がありますが、寝ない子もいますから気が抜けません(笑)
園長:先生1人に対して6人程度のお子さんの面倒をみてもらっています。4月の入園時は、お子さんも小さい上に園に慣れていませんから、先生はかなり大変です。今くらいの時期(8月)になると子供たちも成長し、環境にも慣れてくれるのでだいぶ楽になります。逆瀬川さんも勤め始めてちょうど1年経ちましたね。
保育教諭の仕事は体力的に大変そうです。実際はいかがですか。
逆瀬川:そうですね、体力的に大変なこともあると思いますが、私はあまり感じたことがないです。それよりも、大事なお子さんをお預かりしているので、園には安全のためのさまざまなルールがあり、かつお子さん一人ひとりの違いも考慮し注意を払わなくてはなりません。それを忘れず、間違えずに子供たちと触れ合うことが一番大切なことなので、そちらに神経を使います。命をお預かりしているということを忘れず、気を抜くことがないように心がけています。私もまだまだ新米ですし。
ひざのことをお聞きします。現在の状態はいかがですか。
逆瀬川:全く痛みはなく、問題ありません。階段の上り下り、しゃがむことも普通にできます。毎日子供たちと一緒にグランドを走ったりもしています。
前回のインタビューの時は、時々少し痛むこともあるとおっしゃっていましたが。
逆瀬川:はい、今は全く痛くなく、とても調子がいいです。普段はひざが悪かったことも忘れています(笑)
通院はされていますか。
逆瀬川:病院には行っていません。前回のインタビュー時もたまに行く程度でしたが、今はまったくですね。たまに選手時代から通っている整骨院に行くことがありますが、それは反対のひざや腰などの調子が悪いなという時が多いです。それも半年に1度通うかどうかです。時間がある時に一応手術したところも見ていただき、筋肉をほぐしてもらう感じでしょうか。
以前、左右の足の筋力差がまだ気になるとおっしゃっていましたが。
逆瀬川:今は園の仕事と日常生活の筋力があれば大丈夫ということもあり、気になりません。当時のような激しいトレーニングを今は必要としていませんから、どちらも同じように筋力が揃ったのかもしれません。
今はリハビリやトレーニングなどはおこなっていないのでしょうか。
逆瀬川:はい、ほとんどしていません。日常生活には全く困ることがないので、特にこれといったことはしていません。ひざの調子が悪い時は、階段の上り下りだけでもかなり辛かったことがありましたが、それも遠い昔のようです。
保育教諭の仕事は、ひざや腰に負担がかかりそうですが。
園長:そうですね、負担がかかる場合もありますが、人によるかもしれません。例えば子供を抱っこする場合でも負担のかからない体勢があります。また一度どこかを痛めた人は、次から上手におこなえるように園でも指導しています。私も以前に少しだけ腰を痛めたことがありますが、その時は、無理せず、負担のないように気をつけながら仕事をしていました。
失礼ながら、逆瀬川さんは、ひざのトラブル歴が長かったですよね。そのあたりのお話を教えてください。
逆瀬川:そうですね、ひざトラブルは大学生の頃からずっとです。大学3回生の時に半月板部分切除やドリリング手術をおこないました。ジャンパー膝も経験しました。そしてひざ軟骨を痛めました。バレーボールをしていれば、ある程度は仕方がないと思いますが、今思えばあの頃にもう少ししっかりとトレーニングをしていればよかったと思います。
でも、今はひざに詳しくなりました(笑)
自分のひざや太ももなど、ここが痛いのは、これが原因ではという判断ができるようになりました。もちろん軟骨や半月板などが損傷した場合は別ですが、この筋肉はどこに繋がっているのかを理解することで、対処がある程度できると思います。また、テーピングでもかなり負担が軽減でき、トラブル回避にも役立ちます。私も上手なテーピングのやり方をいろいろ教えていただきました。
チームにいる時、ひざに詳しいだろうからと、他の選手からもよく相談されましたが、さすがに他人様のひざですし、間違ったら大変なので「早く病院に行ってください!」と返していましたが(笑)
入院時やリハビリでエピソードなどありましたか。
逆瀬川:先生から「とにかく1年間はリハビリに専念し、絶対無理をしないでください」と言われていたので、その1年間は辛かったですね。こんなに長い時間、バレーボールを休んでいたことがなかったので。
また、これはできる、あれもできそうだと自分で判断し、動かしてしまって先生に何度も注意されました。今思えば、早く治してチームに戻らないといけないという焦りが相当あったのだと思います。退院後、すぐに仙台の新チームへの入団が決まっていたので。
退院後はどうでしたか。
逆瀬川:退院後はチームに合流するためにすぐに仙台へ向かいました。3月31日に松葉杖がとれ、4月1日に仙台へという強行スケジュールは先生も驚かれましたね。
仙台ではトレーナーと先生が作ってくれたリハビリメニューをしていました。術後1年から徐々にチームに合流してプレーをするようになりましたが、無理をしてしまい、再びひざの調子を悪くしてしまいました。チームから来季はマネージャーとして頑張ってくれと言われ、その後1年ほどマネージャーをしながらトレーニングをしていました。でも、どうしてももう一度選手としてやりたかったので退団し神戸に戻りました。そこからもいろいろありましたが、ヴィクトリーナ姫路に入団することができ、またバレーボールができるようになりました。
神戸に戻った頃は、ひざにまだ違和感があった時期ですよね。
逆瀬川:そうです。日常生活では特に困ることはなかったのですが、関節に何かが引っかかる感じがあって、例えにくいのですが、関節がうまくハマってないような感じ。そのせいか時々階段の上りで力がすっと抜ける感じがありました。ある日練習で着地したときに、ひどい痛みが出てすぐに病院に行きました。
関節ねずみという症状で、関節の中に剥がれ落ちた軟骨などの遊離体があり、それが関節に挟まり悪さをしているということでした。すぐに内視鏡による手術をしてもらいました。2泊3日の入院だったと思います。そこからは劇的に良くなりましたね。今まで何だったのというくらいに良くなりました。

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